日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『からかい上手の高木さん』
『からかい上手の高木さん』 第6巻
山本崇一朗 小学館 ¥552+税
(2017年8月10日発売)
今年7月に発表されたTVアニメ化のニュース。
著者のTwitterアカウントには多くの祝福の声が寄せられた。
累計発行部数は250万部を突破。今もっとも勢いのあるマンガのひとつといっても過言ではないが、人気の要因としてまずあげられるのは、“からかい上手”こと高木さんの存在だろう。
おでこを惜しげもなく見せつけるキュートなヒロイン。
だが、じつは高木さんには圧倒的に足りないものがある。
……残念ながら胸の話ではない。彼女を形成するプロフィールがほとんど「ない」のだ。
下の名前も、血液型も、身長も、家族構成も、好きな食べものも不明なまま。そもそも作中でキャラクターにまつわる情報が語られること自体が少ないのである。
著者が意図的に伏せているというよりは、特に必要性を感じないから決めていないのが正しいのだろう。一般的にマンガにおいて設定やストーリーの重要性はいうまでもないが、ここまで省エネな作品も珍しいのではないか。
舞台は日本の田舎にある中学校。1年生である西片君は、隣の席に座るクラスメイトの高木さんにいつもからかわれている。
悔しがる西片君はどうにか見かえそうと試みるものの、決まってかえりうちに遭ってしまう。
どうして高木さんは西片君をからかうのか。
精神的にまだ幼い西片君は気づいていないが、読者はとっくに彼女の気持ちを知っている。高木さんが彼を好きな理由はわからないままだが、からかわれて頬を赤らめた西片君を見つめる彼女の表情は幸せそのものだ。
最新刊となる第6巻でも、プールで、教室で、下校中の通学路で、からかう高木さんと恥じらう西片君のやりとりは続く。
……が、エピソード「お悩み」では、西片君の無意識なラッキーパンチが彼女をときめかせた一幕も描かれている。これは第5巻「クリティカル」以来の大金星だ。
ほほえましい2人の結末は、前巻で描かれた10年後のからかいを見てのとおり。
それでも今はまだ、高木さんと西片君のやり取りを見ていたくなる。間もなく来たるTVアニメがさらなる吸引力を生むことを期待してやまない。
<文・小松良介>
フリー編集・ライター。主な得意ジャンルはマンガ・映画・アニメなどエンタメ全般。KADOKAWAのエンタメ情報各誌のほか、「rooVeR」「アニメ!アニメ!」などWEBメディアにてインタビュー・記事を執筆しています。
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