『とらわれごっこ』第1巻
サカモトミク 白泉社 \390+税
10月8日は足袋の日。七五三やお正月、成人式など着物を着る機会が多くなるシーズンをひかえる10月の、末広がりで縁起のよい「八」を採用して、日本足袋工業懇談会が制定した。
着物は着てみたいけど敷居が高いと思っている人は多いはず。しかし、一度ハマるとコーディネイトのおもしろさにハマる人が多いのも事実。
『とらわれごっこ』は、「こんな着物なら着てみたい!!」と思わせる、和装の魅力が満載の作品だ。
学校いち小柄な女子・大熊忍が、同級生の男子・小熊美晴の荷物にあやまって牛乳をこぼしてしまったことからドラマは幕を開ける。
小熊美晴は、名前はかわいいけれど大柄で無表情なため周囲から恐れられている存在。そんな美晴に「責任とってもらおうか」とコワモテで迫られ、渡された地図の場所に行ってみると……そこは、美晴の祖母が営むかわいいアンティーク着物ショップ!?
小熊家は男ばかりの4人兄弟で、美晴はかねてより祖母に「着物が似合うかわいい同級生女子をアルバイトにスカウトしてくるように」と命じられていたという。
美晴の祖母の着付けで、着物姿に変身した大熊さん。レトロな花柄の着物に、水玉模様の入った帯、小鳥のブローチを帯留めに……そしてボブヘアにお花の髪飾り。和装がビシッと決まった美晴とともに、街に出てお店のチラシ配りをすることに。
いざ2人になってみると、これまで触れたことのない美晴の優しさに、大熊さんはドキドキ。彼女の足袋の留め具がとれてしまったのをひざまずいて直してくれたとき、初めて真っ正面から彼の顔を見て思わず「小熊くんってかっこいい顔してるんだね!」と、本音がポロリ。
そう、ふだんは見上げるばかりで、恐がられている彼をまじまじ見たことはなかったのだ。照れる美晴の意外な一面を見て、興味をひかれないわけがない!
2人の恋の進展はもちろん、各話趣向を凝らしたかわいらしい女子和装と、男前が光る男子和装を見るのも楽しみ。美形ぞろいの美晴の兄たちの和服姿も見どころだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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