日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『マンガ酒』
『マンガ酒』
浅野りん/雨宮もえ/荒井ママレ/いがわうみこ/壱号/大澄剛/葛城ヒロヨ/かふん/北駒生/佐藤ミト/縞野やえ/新久千映/鈴木小波/田川ミ/田丸鴇彦/ぢゅん子ほか(著)
徳間書店 ¥580+税
(2017年8月19日発売)
漫画家たちが、思い思いにお酒のエッセイを描いている、ゼノンの企画本。
ただし、お酒が題材ではあるけれども、かなりの割合で「下戸」「そんなに飲めない」「別にお酒好きではない」人が参加しているという、珍しいスタイルだ。
酒好き代表は『ワカコ酒』の新久千映。お酒を題材としたマンガを描く際に、どのように店で取材しているのかを説明している。好きなものを仕事にするのは、なかなかたいへんそうだ。
田丸鴇彦は、スタジアムという舞台でのビールのおいしさを描く。いつも同じ売り子さんから買い続けて4年。すっかり顔なじみになっていたところで、売り子さんが引退。ちょっとせつない。
一方飲まない側は、お酒への憧れや、身体が受けつけなかった体験、酔っぱらい観察など、バリエーション豊か。
葛城ヒロヨはマンガ系学校の呑み会での混沌の苦しみや、割り勘の理不尽さを描く。泥酔者の言動を、次の日も覚えている優越感がおもしろい。
深山おからは、飲めないけどお酒を楽しむために広島県の郷土料理「美酒鍋」のつくり方を解説。煮こむ時にアルコールを飛ばして風味を味わうらしい。
飲める人がお酒を語るんだったら、飲めない人だってお酒を語ってもいいはずだ。
「お酒飲めないなんて人生損してる」という人の気持ちはわかる。
でも飲めない側にだって言い分はある。下戸でも飲み会で楽しめることは、いっぱいある。
「おいしい」というお酒賛歌だけではなく、「自分は飲めないが、酒は身のまわりにある」というのも、ひとつの重要な視点だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」