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『カイテンワン』第1巻 柴田ヨクサル 【日刊マンガガイド】

2017/10/27


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『カイテンワン』



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『カイテンワン』
柴田ヨクサル 講談社 ¥600+税
(2017年9月22日発売)


「イブニング」誌で今春に連載が始まった柴田ヨクサル氏の新作『カイテンワン』が、9月に単行本初巻の発売をむかえた。

幕開けは第二次世界大戦下、とある戦地の光景。
米軍の一隊がキャンプしている場所に、とつぜん、全身をメタリックなスーツで覆って武骨なフルフェイスのヘルメットをかぶった日本兵がたったひとりで正面突破を仕掛けてくる。
何十、何百発もの銃撃を浴び、手りゅう弾の爆発をくらい、火炎放射を受けても平然として拳ひとつで敵兵を仕留め続け、ついには戦車の砲撃を受けてようやく絶命した“それ”。
『覚悟のススメ』の強化外骨格や映画『ミカドロイド』の特殊装甲兵もかくやという迫力の、文字どおり人間兵器であった。

そして時は流れて、現在。
ひとりの少年が、星ノ下学園という学校を探す途中で出会った少女に「僕をこのロープで縛ってもらえませんか?」と縄を渡す謎のシチュエーションが展開する。
どういうこと? ……と思うまもなく、学園では少女が全国から呼び寄せた不良番長たちと最強番長を決めるケンカ大会を始め、超人的な格闘術で男たちをなぎ倒していく。
全員をうちのめした少女は自分こそキングオブ番長だと誇るが、そこへ先ほどの少年がふらりと挑戦。 そこで彼はひとつのヘルメットを装着してみせた……。それは、例の人間兵器と同じものではないか。

強烈な打撃を何度受けて何度倒れても、血ヘドを吐きながら立ちあがって少女をじりじり圧倒していく彼は、自分を「人間兵器見習い」と称した。
どうやら星ノ下学園には、ワケありで特殊な能力をもつ子どもたちを集めたクラスがあるらしい。
その目的は、なんと……!

というのが大筋だが、ヨクサル先生のマンガをとおして追いかけている読者諸氏はすぐおわかりだろう。
これは、最近完結した『妖怪番長』の後年譚なのだ(厳密にいうと『妖怪番長』は『巫鎖呱 MISAKO』という作品の過去話なので『巫鎖呱 MISAKO』のタイムラインに追いついたという言い方もできる)。
番長少女は前作主役のゴーストバスター女児トリオ「チーム巫鎖呱」のひとり・巫女ちゃんで、ヘルメット少年のほうは前作の主要人物・数学教師の木場先生の弟という素性を持っている。
なので、ネタバレとも言えないため紹介してしまうが、ストーリーが本題に入ると『妖怪番長』の延長上で妖怪退治バトルが始まるわけです。

もともとヨクサル先生は作品間のクロスオーバーが目立つ作風で、『谷仮面』から『エアマスター』、『エアマスター』から『ハチワンダイバー』とサブキャラクターの引き継ぎが活発におこなわれている。
今回は主役級がタイトルをまたぐ事実上の続編というのが特色で、新作を読みたいという声と既存作ファンのニーズ、双方をまとめて引き受けた内容を楽しめる。

『カイテンワン』から『妖怪番長』『巫鎖呱 MISAKO』へさかのぼって読むもよし、『妖怪番長』から順を追うもよし。 豊かに奥行きを増していく柴田ヨクサルワールドを堪能しよう。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム35年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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