話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『プリマックス』
『プリマックス』第2巻
柴田ヨクサル(作) 蒼木雅彦(画) 集英社 ¥514+税
(2015年10月19日発売)
男の女装? 大いにアリ。
「男の娘」はゲームやマンガ・アニメに定着していて、逆バリどころか市場もすでに開拓ずみだ。
「(女装)美少女」がユニットを組んで、学園祭で歌って踊る? これもアリだ。
幻の珍獣・ツチノコを捕まえて賞金1億円をゲット……いや、ないですよ!!
「カワイイ」を追求する内森モン太は、幼なじみの岬ツバメと篠原竹雄の2人に願いを聞いてくれないかと持ちかける。100万円くれたらやると言われたので茨城の山中で張りこみして、ツチノコを生け捕り。
その賞金の1億円で釣って「カワイイ」(女装)の道連れにする。そんなダイレクトすぎるスカウトは『ラブライブ!』にもなかった……。
個人的に「週刊ヤングジャンプ」での連載を読み始めたきっかけは、蒼木雅彦さん作画の「カワイイ」絵柄に心惹かれたから。
だが、何かがおかしい。
いきなり1億円を手にして、アイドル作品の「理想と現実(カネ)で葛藤」というマグロでいえば大トロを切り捨てているし、親友の2人は柔道部とレスリング部という戦闘力が高めの設定。絵がキュートなのに不良を物理的に説得する拳の出番が多めなのも謎だった。
「柴田ヨクサル、初原作。」
すべての謎は解けた。
将棋マンガのはずの『ハチワンダイバー』が仮面ヒーローマンガになったり、将棋による世界征服を企む鬼将会のビルを倒壊させた創造主が、常人の想像を超えていても当然のこと。
「この世界にある“カワイイ”というものは 絶賛成長中の神様(カミサマ)なんだ」
このクラクラする言語センスが、ご本人の作風とは対極にあるカワイイ作画でも、視覚を超えて脳髄に「ヨクサル因子」を送りこんでくる。
しかも、「ただ言ってみた」のではなく筋も通っている。カワイイは神が作ったものじゃないんだ、人間がつくりだした神なんだ! というモン太の叫びは、たしかに論理的ではある。
「カワイイ」ってメイクやシェイプアップによる人工物ですものね。