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『プリマックス』(柴田ヨクサル・作 蒼木雅彦・画)ロングレビュー! 男子高校生が女装してMAXカワイイを目指す学園コメディ

2015/10/21


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はじめは金目当て(とくに竹雄は親父の借金返済のため)だった2人も、幼虫がサナギになるように「カワイイ」に開眼していく。目にカラコンも入れたり、三階級落として3倍カワイくなろうとしたり、身を削って本気でハマる。

彼らが具体的なゴールに目もくれず、「宇宙一カワイイ」に命を懸けるのが本作の恐ろしさ。
学園祭デビューはサクッとすませたし、武道館コンサートとかチャチなものも眼中にない。グレイ型宇宙人に拉致られたツバメが見た(幻覚かどうか不明)「カワイイの星(?)」にまっしぐらだ。
なお、原作者もこの星が「どんな何かは謎である」と正解をぶん投げている。

生徒全員をとりこにした学園祭の達成感もそこそこに、さらなる高みを目ざす3人。これぞ青春!?

生徒全員をとりこにした学園祭の達成感もそこそこに、さらなる高みを目ざす3人。これぞ青春!?

3人の“変身”を目撃した同級生の女子・ワルコが秘密をバラすことをチラつかせつつプロデュースを持ちかけても、カネならあるので相手にされない。普通はマネージャー役の女子が登場=アイドルを目指す新展開になりそうなのに、ならないのだ。

女装は変態だと罵っていたワルコも3人のダンスは認めていて、「カワイイ」に頬を染める。
彼女の隠れ巨乳がバレて男の友情にヒビが入る……ことはなく、「自分が巨乳になりたい」のスイッチが入る3人。「自慢のカワイイが巨乳に打ち消されている!」とダメ出しするワルコは、もはや「カワイイの星」が見えている仲間だ。

3人組を脅迫して従わせようとするワルコに、モン太は自分たちのアイデンティティを見せつけ、主張する。けだし名言である。

3人組を脅迫して従わせようとするワルコに、モン太は自分たちのアイデンティティを見せつけ、主張する。けだし名言である。

目的地は宇宙一カワイイ、ツッコミ役が不在、次はどう転がるかまったく読めない『プリマックス』のすさまじいドライブ感。
どこか懐かしいと思ったら、コレ、主人公が奨励会を退会して「プロ棋士になれないのにどうするの?」と行き先不明で始まった『ハチワンダイバー』の感覚にソックリかもしれない!


『プリマックス』著者の柴田ヨクサル先生と蒼木雅彦先生から、コメントをいただきました!

原作:柴田ヨクサル

『プリマックス』の骨子は「僕が絵を描かない」ところにあります。
男子が女装するという内容は描きたくても僕の絵ではキャラクターのカワイさに難がありました。そこに僕が一生描けない絵を描く蒼木雅彦先生との出会いがありました、というよりは僕が熱烈にお願いした次第です! 
僕のネームを素敵な絵で蒼木先生が描くという食べたことのないスイーツのようなマンガをご賞味いただければと思います!

作画:蒼木雅彦

僕自身も柴田ヨクサル先生の予想もつかないネームを毎回楽しみに作画を担当させてもらっております。
モン太たちに負けないように僕ももっとカワイイを極めていきたいです。



<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。

単行本情報

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