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『麻衣の虫ぐらし』 第1巻 雨がっぱ少女群 【日刊マンガガイド】

2017/11/22


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『麻衣の虫ぐらし』



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『麻衣の虫ぐらし』 第1巻
雨がっぱ少女群 竹書房 ¥820+税
(2017年10月27日発売)


著者は以前、成人向けマンガ雑誌「COMIC LO」で、少女たちをめぐる生と性と死を描き、広い層に話題を呼んでいた。
今回一般誌で連載しているのは、虫を題材にした田舎の女子たちのコメディだ。

リストラされて田舎で職探しをする20歳の麻衣。農家で働く友人・菜々と、畑の手入れをする日々が続いている。
植物につくたくさんの虫。そのなかには野菜を育てるのに必要な益虫もいれば、ダメージを与えたり病気を振りまく害虫もいる。

菜々がテントウムシの羽に、接着剤をつけて飛べないようにするシーンがある。麻衣はドン引き。残酷な遊びにしか見えない。じつはこれは、テントウムシにアブラムシを駆除させるための手法。飛んで逃げず、葉や茎にくっつくようにさせる知恵だ。
畑の上に敷き詰めたビニールシート。土のなかに何千万といるセンチュウを窒息死させるための仕組みだ。
野菜を育てるためとはいえ、麻衣は「死ぬ死ぬって殺伐とした話しだなぁ」と考える。

植物を育てるということは、何かの命を奪うことと地続きだ。食べる、という行為があるかぎり、すべての生き物が満ち足りて共存することはできない。
有機栽培は自然の力を借りて野菜を育てる農業。生き物の力を借りて、生き物を殺す作業でもある。

この生死の流れには、人間も含まれる。農業をやって生活し、生物を食べ、そして死ぬ。
リアルに虫を表現することで、生と自然と死を描く作品だ。
たくさんの虫うんちくや、虫の擬人化イラストなども載っていて、全体の雰囲気はとても楽しい。百合風味にもニヤニヤ。
読み終わったあと、命のあり方についてハッとさせられるシーンが、言動や背景など随所に練りこまれていることに気づかされるはずだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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