日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『このマンガがすごい! comics スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』
『このマンガがすごい! comics スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』 第2巻
友井羊(作) 見崎夕(画) 宝島社 ¥640+税
(2018年2月16日発売)
日本一の歴史をもつミステリーファンクラブ「SRの会」にて2014年に国内作品1位に選ばれた『ボランティアバスで行こう!』の著者・見崎夕によるミステリー小説『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』のコミカライズ第2巻が出た。
東京のとある一角で早朝からこっそり営業している、スープ屋「しずく」。
フリーペーパー制作の仕事をする理恵はある朝、偶然発見した「しずく」でポトフを食べ、心のこもった優しい味のとりこになる。
そして店主の麻野は、理恵が職場のトラブルで悩みを抱えていることを見抜き、理恵の話から推理を繰り広げて鮮やかに解決するのだった――。
「グルメ×ミステリ」はエンタテイメントの1ジャンルとして今も昔も人気が高い。
「食」という本能に直結したものは、やはり人間の秘めた欲望や思いを露呈してしまうのだろうか?
本作は、そのモチーフとなるのが「スープ」であり、物語の主軸は謎解きではなく、あくまで人間模様のため、基本的にはほっこりテイストながらもミステリ要素がハーブやスパイスさながらピリリと効いているのがイイ。
本巻では、母と子の悲しい物語をとおして、麻野の秘めた過去や娘の露の母親にまつわるエピソードが明らかになる。そんな麻野の過去を理恵が黙って受け止めたことで、2人の距離も一気に縮まったようで……。
今後、2人の関係性にどんなミステリが絡んでくるのか要注目だ。
毎回、趣向を凝らしたスープもいかにもおいしそうで、グルメマンガとしての満足度もなかなかのもの。
仕事や人間関係に疲れた時にホッと心を温め、溶きほぐしてくれる1冊だ。
\マンガ『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』は第1~3話を無料掲載中!/
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。『音楽マンガガイドブック』(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69