『暗殺教室』第11巻
松井優征 集英社 \400円+税
(2014年10月3日発売)
2015年1月からのテレビアニメ放送も決定し、今や「週刊少年ジャンプ」の看板とも言えるほどの人気作品となった『暗殺教室』最新巻。
殺せんせーと同じ触手を持った強敵イトナを仲間に迎えたE組が一丸となり、体育祭の棒倒しと学童保育に奮闘する。
前半の山場となる棒倒し戦は、理事長の息子にしてA組のトップである浅野学秀が、期末テストでE組に負けた悔しさをぶつけるためにE組へ挑戦。
海外から屈強な外国人を招集してまでE組を叩きのめそうとする浅野率いるA組に対し、数々の暗殺教育で成長を遂げたE組が殺せんせーの戦略とともに立ち向かっていく。
一見不利な戦いを心理戦や知略によって勝利につなげる異質なバトルは暗殺教室のメインとも言える展開。
今回も海外勢の助っ人により圧倒的な戦力で襲いかかるA組を、E組イチの人望を集める磯谷が中心となってみごとに撃破。またしてもE組に負けた浅野学秀に対し、父親ながら強烈なプレッシャーをかける理事長とのやり取りもみどころだ。
一方、後半戦となる学童保育は、暗殺技術に慣れるあまり自分の力を過信してしまったE組が思わぬことで学童保育の園長にけがを負わせてしまい、園長の代理として学童保育の職場で働くことに。
学校再最下位というコンプレックスが、暗殺技術の習得によっていつしか慢心に変わっていったE組が、学童保育で働くという2週間の特別授業で心を取り戻していく。
10巻を超えた長期連載作品となりつつも、殺せんせーの心理戦やテンポのよいシナリオ展開、小気味のいいギャグは健在。1巻から勢いを落とさない作品力の継続が楽しみな一方、地球滅亡まで残された1年間もあっという間に過ぎている。人気作品にありがちな時間かせぎ展開もない本作が、このスピード感を保ちながら最後にどんなエンディングを迎えるのか。
当初から存在をちらつかせている殺せんせーの恩師の正体も気になるところだ。
<文・甲斐祐樹>
IT系ライターながらマンガも大好き。著書は「スマホ&タブレット“二刀流”仕事術。」「Chromecastの使い方」など。個人ブログは「カイ士伝」