『ふんだりけったり』
ふみふみこ 講談社 \610+税
(2014年10月10日発売)
『女の穴』や『ぼくらのへんたい』、『さくらの園』で、今や旬の作家として注目を集めるふみふみこの初投稿作にして、2007年の幻のデビュー作品シリーズが、ついに刊行!
ポックリ死した国王にかわって、国の権力を掌握することになった姫と大臣。美人だが性格のゆがんだ妻と彼女を偏愛する夫の夫婦。ぶっちゃけガールズトークに興じる女子2人組……などなど。ちょっと、いや、かなり変だが愛すべき登場人物らによるシュールギャグ4コマ。
「性/世界に対する違和感」といったコアなテーマの担い手であり、稀代のストーリー作家でもある、ふみふみこの原点がギャグで、しかも4コマとは意外極まりないが、シュールな設定やセンシティブかつ思い切りのいい下ネタのセンスなど、現在に至る「芽」は随所に確認できる。
冒頭で奇抜で設定をボンと提示したまま加速してゆく彼女の特異なストーリーテリングは、案外、4コマで鍛えられた筋力によるものなのかも……なんて深読みも可だが、現在とは絵柄もガラリと異なるため、ふみふみこのことを知らずに読んだら読んだで、純粋に楽しめる「個性」と「うまさ」もあり。
コッチ方面を追求していれば、それはそれである程度のポジションは確立していただろうなあ……と思いつつ、ファンとしてはコッチで開花しなくてよかった、と胸をなでおろしたり。
巻末には2014年の書き下ろし新作4コマも収録。 8年の変遷をその目で確かめて!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69