信長協奏曲 10
石井あゆみ 小学館 ¥494
(2014年5月12日発売)
戦国時代にタイムスリップした高校生サブローが、顔が瓜二つの織田信長と入れ替わり、天下統一に向けて奮闘する異色の時代劇。ついに単行本が10巻目を迎えたばかりか、フジテレビ開局55周年記念プロジェクトとして本作のアニメ化(7月~)、実写ドラマ化(10月~)、実写映画化(公開時期未定)が発表( http://www.fujitv.co.jp/nobunaga-concerto )された。「ゲッサン」(小学館)創刊と同時に連載を開始して以来、いまもっとも世間の耳目を集めているといっても過言ではない。
10巻では、とうとう長篠の戦い(1575年)が最終局面を迎える。あいかわらずサブローは、平成生まれのゆとり現代っ子らしく自由奔放な振る舞いをして家臣たちを翻弄しているが、この時点でタイムスリップから26年が経過し、サブローは42歳(数え年)になっている。
サブローが年を重ねているのとともに、作中の時代も実際の歴史に沿って動いている。史実ではこの後、織田家は手取川で上杉謙信に敗れ、松永久秀が反旗を翻し、秀吉が中国方面軍を任されるようになっていく。帰蝶の侍女おゆき(上杉の間者)、松永久秀、秀吉など、これまで本作の脇を固めてきた重要なキャラクターたちも、否応なく歴史の波に呑まれていくことになる。
この10巻では、“来るべき未来”を目の前に控えたキャラクターたちに、大きな転機が訪れる。なかでも、これまで隙あらば信長の命を狙ってきた秀吉の心境に、なにやら変化が見られる点に注目したい。
物語は本能寺の変(1582年)に向けての最終楽章に突入した。サブローと他のキャラクターたちがどのような協奏曲を奏でるか、今後の展開に目が離せない状況である。
それにしても親方様、42歳にして奥方様と「でえと」とは、いつもまでたってもお若いですね。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。