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12月14日は討ち入りの日 『忠臣蔵』を読もう!【きょうのマンガ】

2014/12/14


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『忠臣蔵』第1巻
久保田千太郎(作)土山しげる(画) リイド社 524+税


いわゆる「元禄赤穂事件」が起こったのが元禄15年12月14日であることから、本日は「討ち入りの日」(忠臣蔵の日)と物騒な記念日に制定されており、四十七士のお膝元である兵庫県赤穂市では赤穂義士祭が行われる。

ところで「忠臣蔵」という言葉自体はよく耳にするものの、実際に何があったのかをちゃんと説明できる人は少ないのではないだろうか。「お殿様の敵討ちを47人でやったんでしょ?」程度の知識の人が大半だろう。
筆者の知り合いのアラサー女子などは「忠臣蔵ってどんな蔵なの?」とのたまう始末……(トホホ)。

そこでオススメしたいのが、久保田千太郎のシナリオを土山しげるがコミカライズした『忠臣蔵』。
土山しげるといえば『喰いしん坊!』『極道めし』といった作品に代表されるように、B級グルメや大食いモノの第一人者であるが、じつは時代劇漫画家でも知る人ぞ知る存在だ。

事件が起こったのは犬公方と呼ばれた徳川綱吉の時代。
浅野内匠頭が江戸城中で高家筆頭の吉良上野介に斬りかかった刃傷事件から、かの有名な吉良邸の討ち入りまでを、じつにわかりやすく全5巻でまとめている。

なぜ吉良は、浅野をキレさせるにいたったのか? なぜ場をわきまえずに、浅野は吉良にキレたのか?
この構図こそが「忠臣蔵」におけるキーポイントだが、本作を読めば至極納得。結局は地方から搾り取るだけ絞ろうとする幕府の圧政が生んだ悲劇であり、浅野のことを「田舎大名」と吐き捨てる嫌味な吉良にしても、お上の顔色をうかがう中間管理職にすぎないことがよくわかる。

ちなみに「忠臣蔵」では悪役の吉良も、三河(愛知県)では領民想いの名君。
前述したように赤穂市では赤穂義士祭が行われるが、それに対抗して吉良邸のあった両国の本所松坂町公園では、討ち入りで命を落とした吉良を供養するための吉良祭が行われるほどだ。

「忠臣蔵」にはさまざまな解釈の作品があるが、時代考証がずさんなモノや、過度に浅野を悪役に仕立てたモノも少なくない。
そんななかでキッチリと史実を踏まえ、時代背景から浅野や吉良が置かれている立場、2つの大きな事件に至る過程が丁寧に描かれている本作は、「忠臣蔵」入門にピッタリである。



<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
「ドキュメント毎日くん」

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