『喋喋喃喃』
竹宮ジン 一迅社 \852+税
(2015年2月18日発売)
「喋喋(ちょうちょう)」というのは「口数の多いこと」。
「喃喃(なんなん)」というのは「小声でしゃべること」。
だから小声でも聞こえる近しい距離で会話を交わしつづける、そんな仲の良さそうな男女の様子のことを「喋喋喃喃(ちょうちょうなんなん)」という。
「コミック百合姫」で連載された竹宮ジンの『喋喋喃喃』で描かれるのはしかし、男女の恋愛模様ではなくガールズラブであり、口数は多くとも本当に大事なことは伝えられないでいる少女たちの、素直に仲睦まじいとは言いがたい湿り気を帯びた三角関係だ。
主人公のあおいと、親友で面倒見のいい千尋。2人は高校の入学式で、元気いっぱいの志乃と毒舌な奈緒のコンビに出会い、仲良くなる。
あおいは昔から密かに千尋のことが好きだったのだが、千尋は志乃をかわいがるようになり、そしてその三者の様子を見た奈緒はあおいに「ちょおちょお」と話しかける――。
「ちょおちょお」という呼びかけと、「なんなん(何なの)」という返し。関西を舞台に展開する本作では、この応答が繰り返し描かれる。
本作はいわば、はじめはまだ自分に誠実に向きあえていない迷える女の子たちが、「ちょおちょお」「なんなん」というやり取りにつづく、大切な言葉を見つけ出すまでの物語である。
<文・高瀬司>
批評ZINE「アニメルカ」「マンガルカ」主宰。ほかアニメ・マンガ論を「ユリイカ」などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
Twitter:@ill_critique
「アニメルカ」