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『エグゾスカル零』第8巻 山口貴由 【日刊マンガガイド】

2015/03/08


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『エグゾスカル零』第8巻
山口貴由 秋田書店 \552+税
(2015年2月20日発売)


山口貴由『エグゾスカル零』が、ついに最終巻を迎えた。

作者の初期代表作『覚悟のススメ』に登場したキャラクターと同名の青年・葉隠覚悟を主人公とした本作は、シリアスながらもどこかユーモラスで根明だった『覚悟』から一転、守るべき民も闘う敵もいない未来の地球に突如として目覚めてしまった「エグゾスカル戦士」と呼ばれるヒーローたちの苦悩を描く、荒涼としたストーリーとなっている。
価値観の相対化が浸透している現代において、ともすれば陳腐化してしまう「正義のヒーロー」という存在を、改めて真正面から問いなおした、作者の意気込みを感じる作品だ。

もちろん魅力は重厚な展開だけではない。前作『シグルイ』から形作られた山口氏特有の超高速のアクションも健在だ。
様々な特殊兵器を内蔵した装具「強化外骨格」を身につけたエグゾスカル戦士たちではあるが、その攻撃方法は必ずしも派手な兵器だけに頼ったものではない。タックル、裸締め、ヒールホールドなどなど……。
一見地味にも思える現実的な格闘技術を、スーパーヒーロー同士の戦いに盛り込むことにより、バトルマンガで陥りがちな、ありきたりな必殺技の繰り出し合いに留まらない、流れるような展開の妙味を重視したバトルが実現。その生々しさすら感じる描写は、まるで総合格闘技の試合をかぶりつきで観戦しているような臨場感を味わわせてくれる。
現実離れしたアクションが可能なキャラクターであるからこそ、ひとつひとつの描写の説得力を追求していくバランス感覚は、まさに熟練の技術だといえよう。

きたる「チャンピオンRED」5月号からは、新作『衛府の七忍』の連載開始も予定されている。
まだまだ著者の動向から目を離すことはできなさそうだ。



<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。

単行本情報

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