『おれたちの頂 復刻版』
塀内夏子 山と渓谷社 \1,000+税
1966年の3月26日、富山県で日本初となる「登山届出条例」が制定された。
言うまでもなく山には危険がつきものだ。軽い日帰りのハイキングのつもりで、だれにも告げず軽装で登ったところ、急な悪天候に見舞われ遭難……ということも珍しくはない。
登山計画書の提出を義務づければ天候を見こんだ遭難防止指導ができ、また万が一遭難した場合の対策もとりやすくなる。
山岳マンガの名作は多々あるが、ここで紹介する『おれたちの頂』は、主人公たちが高校生という珍しい作品だ。
幼い頃からロッククライミングの経験があり、強気でやんちゃな南波恭介。技術面では彼に遅れをとるものの、慎重でまじめな佐野邦彦。性格は正反対だが、それゆえにお互いを必要とする2人ががっちりと信頼関係を結びあう姿がまぶしい。
2人の友情と命を賭けた山行でのパートナーシップ、ひたむきな情熱、頂上を陥れる感動……そして山の厳しさをもしっかりと伝える感動作である。
それに加えて、読みながら山登りの道具や必要な準備についてなども自然に理解できる構成になっており、これで登山に目覚めた読者もいるのではないだろうか。
1983年に「週刊少年マガジン」に連載された本作が、山岳関連の権威である「山と渓谷社」のヤマケイ文庫から復刊リリースされたことは、じつに感慨深い。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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