『うせもの宿』第1巻
穂積 小学館 \429+税
(2014年10月10日発売)
わずかデビュー数年にして、注目のヒットメイカーとなった穂積の最新作。
少女のような女将さんがいる古い旅館。そこを訪れる客は、失くしたものが必ず見つかるという――。
仕事一筋で不機嫌なバツイチ男、猫好きのあどけない少年、雪山からおりたばかりの陽気な山男……。「マツウラさん」と呼ばれる男の案内でやってきた彼らは、わけのわからないままこの宿で過ごすうちに、忘れていた記憶を思い出し、最後には笑顔で宿を去ってゆく。
『式の前日』で読者をアッと驚かせた「仕掛けのうまさ」は、本作でも全開!
1話完結のスタイルということもあり、ノスタルジックで、ちょっと不可思議で、切ないイイ話集……と安心して読んでいたら、何話目かで世界が足下から揺らぐようなサプライズが明らかになる。
どうやらこれは単純なお悩み解決ファンタジーではなさそうだゾ、と気をひきしめて最初から再読したくなる、中毒性あり。
巻末ではさらなる謎を呼ぶ、新たなサプライズも暗示され……。はたして、「うせもの宿」の謎と秘密とは!?
まだまだ、二重三重のサプライズが待ち受けていそうで、目が離せない!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて『おんな漫遊記』連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69