『オルガの心臓』第2巻
雨宮もえ 講談社 \581+税
(2015年3月6日発売)
人工心臓を作ることができる、姉のオルガ。弟のニトと一緒に田舎で診療所を営みながら、静かに暮らしている。
一見幸せに見える2人の生活。しかしオルガはニトの命令で、一歩も家から外にでることを許されていなかった。
心臓という命に関わる臓器を軸に、お互いを縛りつける姉弟のいびつな関係を描くミステリー。
1巻でのオルガは、ニトによってほぼ軟禁状態だった。2巻では、未来ある子どもたちの心臓を作りたいという男性・シマがやってきたことで、俗世から隔離されたオルガとニトの2人きりの世界に風穴が開く。
2巻でもっとも目を引くのは、姉・オルガの心の病理だ。
ニトのことを心から愛し、信頼し、軟禁状態を苦とも思わない彼女しかし、彼女にはニトのことを激しく憎んでいた時期があり、そこから大きな問題が起きてしまったことが明かされる。
2人は本当の姉弟なのか、ニトが「僕の心臓は姉さんのものだ」と繰り返すのはなぜか、なぜ2人は孤立した場所に住んでいるのか。数々の謎がいっぺんにとけていく巻だ。
心臓にこだわるオルガ、ニト、シマの苦しみを見ていると、心臓はただの血流ポンプではなく、人々の思考がしみこんでいる部位のように感じてしまう。
完璧な人工心臓がなかなか作れないように、完璧な心の安らぎもなかなか生まれない。ただ、よりよくする努力はできるはずなんじゃないか……というところである事件がおき、最終巻である3巻に続く。
愛憎渦巻く彼女たちの心臓の行く末を最後まで見守りたい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」