『ミルクマン』第3巻
南国ばなな 新書館 \590+税
(2015年3月25日発売)
うーん、清々しいまでの変態っぷりじゃないか!
『子育てたんたん』『ハロー姉妹』と、最近は子育てエッセイでも人気を博している南国ばななの『ミルクマン』。
前巻から3年半ぶりとなる最新刊3巻も、あいも変わらずのパワフルな笑いで読者を楽しませてくれる。
主人公は、タイトルどおりの牛乳屋の青年・牛田猛。きまじめなカレだけれど、きまじめすぎるがゆえか、おバカで迷走や暴走をくり返してばかり。
男なのにセクシーでコケティッシュなアパートの大家に遊ばれ、住人のAV男優・スイートコーン飯田こと飯田文治や、牛乳屋とは性格もルックスも対極のコーヒー牛乳屋にいじられ、牛乳屋は今日も配達に、トラブルに、自分探しに奔走する……!?
ジャンルとしてはコメデイながら、本作で笑いになっているのは力わざのギャグだ。
かけあいや間合いのくすぐりもありながら、行動、格好、展開のハジけたギャグで読者の目も心もさらっていく。
しかもBL風味を逆手にとった、下ネタやエロネタも満載だ。ただ、それが突き抜けているだけに、男性読者も女性読者も素直に腹を抱えて笑ってしまう。
ギャグの質で言えば、志村けん。やり切っている堂々たる変態っぷりは、お見事のひとことだ。
アパートを舞台にしたドタバタギャグと言えば、往年の名作『マカロニほうれん荘』(鴨川つばめ)だが、ノリやアクションも『マカロニそうれん荘』に負けず劣らずだ。
暴走ギャクでありながら、なんだかほっこりさせられるのも『マカロニほうれん荘』に通じるところで、トラブルばかりでも、常に仲間が傍にいるコミュニティー感がほっこりにも繋がっているのかも?
最新刊収録の一同で海水浴に行く話は、笑い過ぎで腹筋だけじゃなく括約筋まで痛くなってくる爆笑エピソード。
ローションにフェロモンに、乳首占いに大蛸まで!? 今や少年誌でもここまでのギャグ作品はないというくらいの、ドタバタぶりとギャグ攻勢。
牛乳屋の行きすぎたおバカぶりもかわいいが、スイートコーン飯田、男でもクラクラするなぁ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。