『キン肉マン』第50巻
ゆでたまご 集英社 \400+税
(2015年4月3日発売)
『キン肉マン』のコミックスが通巻50巻を迎えた。
その内訳としては、「週刊少年ジャンプ」連載時(1979~1987年)の1~36巻、読みきりだけを収録した37巻、そして2011年より「週プレNEWS」で連載中の「完璧・無量大数軍編」を収録した38~50巻となっている。
2012年12月に新宿ロフトプラスワンで開催した「超別冊『このマンガがすごい!』ナイト2013」で嶋田先生(ゆでたまごの原作担当)をお招きした際には、WEB連載に臨むにあたって「つねにパイオニアでいたい」という思いがあったことを明かしてくれた(連載再開時にはWEB発の単行本はまだ少なかった)が、そのパイオニア魂が結実し、通巻50巻という“大台到達”をなしとげたのである。じつにめでたい!
さて、この“大台到達”を前に思い出してほしいのが、キン肉族に伝わる「天上兄弟ゲンカの図」だ。
ジャンプコミックス16巻「とむらい合戦!! の巻」で語られた、ゴールドマンとシルバーマンの果たしあいのことである。両者はお互いの首を斬りあい、これにより黄金マスクと銀マスクが誕生することになったわけだが、この2人の神の対決を裁いた「裁きの神ジャスティス」の存在をおぼえているだろうか?
裁きの神ジャスティスは、表情こそ判然としないものの、弁髪を揺らしたラーメンマン型のシルエットだった。キン肉マンと悪魔将軍の対決が「現代の天上兄弟ゲンカ」にならないようにレフェリーが待望され、そこに同じくラーメンマン型スタイルのモンゴルマンが登場。モンゴルマンは世紀の一戦をフェアにジャッジしたが、「裁きの神」はこれ以降登場することがなかった。
この50巻では、16巻時点ではうやむやになった「裁きの神」の正体が判明するのだッ!
この長大なキン肉マン・サーガの新展開に、ファンは心を躍らせることは必至。なにしろ「キン肉星王位争奪編」では105人の超人神や超人閻魔などが登場しているから、今エピソードではそれ以上の存在が出てきてもなんらおかしくない。
また、今巻ではついに魔界の王子・アシュラマンがリングイン!
かつて『キン肉マンII世』の「悪魔の種子編」に登場し、圧倒的スケール感で新世代超人をコテンパンにしたあげく、「現代の見てくれだけの悪行超人と違い…わたしたち悪魔超人は…」「鍛え方が違う! 精根が違う! 理想が違う! 決意が違う!」の名言をくり出した際には、「アシュラマンだけはガチ!」と多くの読者を震えあがらせたものだ。
『キン肉マンⅡ世』より前の世代を描くこの50巻では、そんなアシュラマンが「新たなる時代の超人の代表として」完璧超人・始祖(パーフェクト・オリジン)に挑む。まだ老獪さを身につける前の、脂が乗り始めた頃のフレッシュなファイトに血湧き肉躍る。
竜巻地獄! 阿修羅稲綱落とし!! 阿修羅バスター!!!
日々アップデートされ続ける中井先生(ゆでたまごの作画担当)の画力が、「むかし見たあの技」を、より魅力的に、より強く、より重く、説得力をもって魅せつけてくれるのだ。
最新版の悪魔のフルコースを堪能しよう。
個人的には“あのコンビ技”を、あんな方法で再現するなんて! というサプライズに感涙。
サムソン・ティーチャーとの回想シーンでの、幼アシュラマンの「たつまきじゅごく!」(ジャンプ・コミックス27巻)のセリフに「アシュラかわえー!」と萌え萌えになったアシュラ・フリークは、絶対に見逃せない50巻である。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama