『ヲタクに恋は難しい』第1巻
ふじた 一迅社 \815+税
(2015年4月30日発売)
言わずもがなだろうが、まず言っておこう。
この作品に出るメインの登場人物は、すべてヲタクである。
隠れ腐女子、ヘヴィなゲーヲタ、一般的ミーハーヲタ、男性キャラ専門のコスプレイヤーと、まあじつに彩りも鮮やかなヲタクっぷり。
そんなキャラたちへの共感がハンパない人々から圧倒的に支持された、pixiv発超人気作品がこの『ヲタクに恋は難しい』。
50ページ以上というかなりの描き下ろしが加わっているので、pixivで読者だった人も改めて楽しめる充実した一冊だ。
主人公カップルは、かわいく笑顔で勝負のダメOL、じつは密かに腐女子の桃瀬成海(ももせ・なるみ)と、眼鏡長身イケメン、ハイスペックだが極度のゲーヲタの二藤宏嵩(にふじ・ひろたか)。
詳細なキャラ紹介、というかヲタク度合いとその萌え分野の質と方向性については本作をご参照ください。あるある設定に苦笑すること間違いなし。
さて、成海が転職してきた会社に、たまたま幼なじみでヲタ友の宏嵩がいたところから物語は始まる。
2人で頻繁に飲みにいくようになるが、もっぱら成海の愚痴の場であったり、ゲームに必要なレア素材集めを宏嵩に助けてもらったり。
その帰り、宏嵩がぼそりとこう言った。
「…じゃあ俺でいいじゃん」
今まで、彼氏にヲタクじゃない相手を選んで撃沈し続けていた成海。
そう。宏嵩なら、ゲームの素材集めもレベル上げも、さらにイベントの売り子に同伴も可能なのだ。
いきおいで、付き合い始めてしまうふたり。
でもあらためて付き合ってみると、成海は意識しすぎるあまり照れてぎくしゃく。
恋愛ゲーで恋にはじゅうぶん“慣れてる”2人だけれど、リアルな相手にはうまく接することができなかったり。
当たり前だけれど、恋愛は頭でするものではないのだ。
とはいえ、じつは2人とも、相手をもとから特別だと思っていたのは間違いない。
成海は宏嵩については「恋人にするのがもったいない大事なヲタク友達」だと思っていたし、そして宏嵩もまた――。
お互いヲタクだから、真っ正面からマジメに恋愛表現なんてできないんです。
だけど相手を恋愛的な意味で特別と感じたら、ヲタクだろうがそうじゃなかろうがぎこちなくなるのは一緒のはず。
だいたい今の世の中、多かれ少なかれヲタクのネタや話法は広まってるから、ヲタ語やヲタ会話で斜めにかわすのなんて日常茶飯事。
だからこのマンガは、じつはあらゆる恋人たち(および恋をしたい人たち)に対して、すごく説得力がある。