『低反発リビドー』
高野雀 徳間書店 \580+税
(2015年5月20日発売)
デビュー作『さよならガールフレンド』が2015年3月の「このマンガがすごい!WEB」オンナ編第1位を獲得。マンガ読みが注目する新鋭・高野雀の、全30話からなるショートコミック・オムニバス、そのキーワードは“性癖”だ。
各話、気のおけない同性同士の、あるいは恋人たちの間でかわされる日常風景を切り取ったスタイル。そのなかで浮かび上がる、「自分ではふつうだと思ってたけど、これってヘン?」の数々。
その“性癖”のこだわりはまさに十人十色で……。
ワキとVラインを永久脱毛したという恋人に「長くつきあった仲ゆえの“スキ=生えかけ”が見られないなんて」と悲しみを吐露する男性。
汗まみれで息の上がってる宅配男子を鑑賞する楽しみを語る女子たち。
「恋人を自分の手料理で太らせていく、その過程が興奮する」と語る、単なるぽっちゃり好き以上の嗜好を語って友人たちにドン引きされる男……。
登場人物たちの会話のリズムが心地よく、スッとその“輪”のなかにひきこむドラマの才は天性のものか。
読み終わったあとは、だれかとこんなふうにたわいのない話を「へえ~」「あるある」「やっぱりないわソレ!」なんてしゃべってみたくなるのだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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