『魔法のつかいかた』第2巻
草間さかえ 新書館 \650+税
(2015年6月25日発売)
その正体を隠し、一般人として日々を送る魔法使いたち。彼ら魔法使いは、もの探しの魔法と、もうひとつ自分にだけ授けられた特別な魔法の力を待つ。
ひとりぼっちで一軒家に住む泉太郎(せんたろう)もまた、そんな魔法使いのひとりだ。ある日、彼が出会った、春生(はるき)という少年。家族との関係に悩み、死を望んでいた春生は、みずから魔法使いである泉太郎にさらわれて、家族の前から姿を消す。
泉太郎の家に住み着き、弟子となって生活を始める春生だったが……。
草間さかえ『魔法のつかいかた』は、そんなふうにして出会った魔法使いと弟子、そして周囲の人々との関わりを描いた作品だ。「魔法使い」というファンタジックな設定はあれど、だからといって物語にご都合主義や甘ったるさはない。
泉太郎の弟子となった春生。だからといって修行をするわけでもなく、2人の日々はすぎていく。しかし春生は家族の前から姿を消した身、その素性は隠さなければいけない。
そんななか、春生と実母との折り合いの悪さは、ある決定的な惨劇を生みだすことに。
いっぽうの魔法使いの泉太郎。メガネでタバコを吹かしてばかりの彼は、社会人としては不器用でダメな大人の部類だ。
しかし泉太郎にはもうひとつの顔がある。彼の持つ魔法の力は「人殺しの力」。その力を使い闇の仕事を請け負ってもいる。
シャープで鋭角的だけれど、味わいも温かみもある草間さかえの絵柄が描き出す世界は、いつもどこか優しげで、なおかつ色っぽい。本作もまた、子どもっぽいだけに大人らしい泉太郎と、大人っぽいだけに子どもらしい春生の暮らしや、友人の魔法使いである絹子と弟子の雅の間柄など、優しい世界が築かれている。
さらに本作においては、底辺にビターでシリアスなものが流れているからこそ、余計に優しさも際立っているのだろう。本作は、まさに大人のためのファンタジーでもあるのだと思う。
3年ぶりの刊行となる最新第2巻では、春生が泉太郎の魔法の正体に近づき、また春生の存在に気づいた魔法使いの協会が彼に近づいてくる。
明確なBL作品ではないが、「ウィングス」掲載の作品ということで、そのニュアンスを期待する読者も多いだろう。個人的には、登場する男性キャラクターの色気、加えて、子どもが大人の秘密と苦悩をのぞき見るというだけで、かなりセクシャルにも感じる。
マンガ読みの方には、よしながふみ『西洋骨董洋菓子店』のあの感じ……と言い添えたい。
同作もまた「ウィングス」掲載作だったが、洋菓子店というメルヘンでファンタジックな場所を舞台に、一見、優しくて心地よく、そのじつ、シビアでもの悲しい人間関係と人の心が描かれていた。
『魔法のつかいかた』もそこに並ぶ名作になることは間違いない。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。