『かみわたし ―神様の箸渡し』第1巻
有馬啓太郎 少年画報社 ¥562+税
8月4日は「箸の日」。お察しのとおり「は(8)し(4)」の語呂合わせからだ。
この日、日枝神社(東京・千代田区)では全長1メートルもの箸を神前に供え、古い箸を焼いて供養する「箸供養祭」が行われている。
ここで紹介する作品は、大きな箸を「橋」にして日常と神の世界を行き来する少年の物語だ。
それは建(たける)が8歳の夏。田舎の祖父の家で、大きな金属製の箸を持ち出して、いたずら心から神社の参道を横切る小川に箸で“橋”をかけたのがことの発端に。
じつはこの神社には、女神が社から出てしまわないよう小川に橋をかけてはならないといういわくがあるのだ。その禁を破った建は、なんともかわいらしいウサ耳の少女姿をした女神・テルヒメと遭遇する!
ところが、次の日には箸を取り上げられてしまい、それっきりテルヒメとは会えないまま。
7年の月日を経て、祖父の家に越してきた建は物置であの箸を見つけると、まっすぐ神社へと向かうのだ。初恋の相手に出会うために……。
箸で橋をかけるとは単なるダジャレのようだが、もともと「はし」という言葉には、“向こうとこちら”をつなぐ意味を持っている。
つまり「橋」も「箸」も字は違っても由来は同じ。箸は、古代には神様への供物を捧げる神事の道具であり、一般に食事に使われるようになったのは8世紀頃といわれている。
純な高1男子が、キュートなワガママ女神に振り回される本作は、基本ドタバタ“人外”ラブコメだが、ふと全国各地におわす八百万の神々の存在を想起させ……なんともいえない物懐かしさを連れてくるのだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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