『GOGOモンスター』
松本大洋 小学館 ¥2,500+税
記念日は、語呂合わせになっていることが多いもの。
本日の記念日もまさにそれで、8=ハ、5=コということで“ハコの日”。
これは1991年、東京紙器工業組合が制定したもので、紙器業界の技術の向上と、一般消費者に紙箱のよさを広めることを目的とした日だ。
書籍の書店への搬入や搬送にも使われてることから、マンガともなじみが深い紙箱や段ボール箱。そんな紙箱を被った小学生が登場する作品がある。松本大洋が2年をかけて描きおろした長編『GOGOモンスター』だ。
普通の人には見えず聞こえない、「あちら側」のものが感じられる、小学3年生のユキ。
彼はその言動と行動から異端児扱いされていて、唯一の理解者は、「ガンツ」と呼ばれる用務員の老人だけだ。
そんななか、ユキのクラスにマコトという転校生がやってくる。
まわりに嫌われながらも、平気でいられるユキの存在が気になるマコト。いっぽう、そんなふたりを遠巻きに見ているのが、5年生の通称「IQ」だ。
このIQもまた、ユキと同じく異端児だ。高い学力を持ちながら、箱を被って顔を隠し、まわりを遮断しながら学校生活を送っている。教師に、IQは言う。
「箱の姿が本来の僕です、先生」
やがて、世界を共有していくことになる、ユキ、マコト、IQ。
そして、やがてその世界が、現実を侵食し始めていく。
壮大なる観念的な物語にも思える本作だが、描かれているのは子どもの時間の刹那とその終わりだ。
そこにおいて、IQの箱が意味するものは……。
ちなみに、本作単行本のカバーもまた箱型の装丁。
紙箱のなかには、様々なまだ見ぬ世界が詰まっている。そんなことも感じさせてくれる一冊だ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。