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『ノアの阿呆舟』 しりあがり寿 【日刊マンガガイド】

2015/04/16


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『ノアの阿呆舟』
しりあがり寿 KADOKAWA/エンターブレイン \980+税
(2015年3月25日発売)


なんじゃこりゃぁあ!!!??? と、読後は亜空間に放り出されること間違いナシ!

ひとつの雑誌連載で3つの異なる長編を断続的に発表し、途中で掲載されたシリーズ外の読切短篇(『あの日からのマンガ』ほかに収録)などもとりこみながら、すべてがひとつに集約されていく――というアクロバティックの長篇連載作として、大きな話題を読んでいる意欲作の単行本化第2弾。

 

地球に見切りをつけて脱出することを決めたマッドサイエンティスト、ノア。
平和な日々を過ごしていた文太少年は、その箱舟ならぬロケットに乗る「選ばれし者」として突如、拉致される。
そこにいあわせたのは、人間に似せて遺伝子をいじられた動物たちと熟女の魂を持つiPad…って!

終末感漂う世界で次々と繰り広げられる、ナンセンスで支離滅裂な極北ギャグに、笑いもパニックも通り越して、よもや思考停止!?

加害者が被害者でもある裁判。
種を滅びさせぬための異種交配。戻る故郷を失い、ただあてどなく生き続ける絶望。
どこかで聞いたような話が、どこかで見たような姿と言葉で綴られゆく。

夢と現実、虚構とリアルを往来しながら、その皮膜をズブズブと突き抜けて、脳味噌のヤバイところをモゾモゾとまさぐってくるあたり、『弥次喜多 in DEEP』を彷彿させる感じ。

驚愕の物語は、さらに兄弟作『アレキサンダー遠征』『黒き川』と合流し、多重螺旋の壮大なロマンを描きながら、綿々と続いてゆくわけで……。
コレを読むなら当然、『アレキサンダー遠征』と『黒き川』、そして近く刊行されるという完結篇『もうひとつの…(仮題)』も必読!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて『おんな漫遊記』連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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