『クジラの子らは砂上に歌う』第5巻
梅田阿比 秋田書店 ¥429+税
(2015年7月16日発売)
砂がすべてを覆い尽くす世界で、砂の海を漂う巨大な漂泊船“泥くじら”で暮らす人々を描く作品の第5巻。
感情を持つことを許さない“帝国”の軍艦スキロスの襲撃から、犠牲を出しながらもなんとか生き抜いた“泥くじら”の人々の前に、外界から新顔が現れる。
彼らはみずからを“スィデラシア連合王国”の者だと名乗る。彼らを率いるのは連合王国の領主の息子・ロハリト。このロハリトのキャラがすばらしい。
他方で、“泥くじら”を襲って撃退された“帝国”軍の長官オルカは“帝国”に戻り、作戦失敗の責任を問われる。
キャラが立っている本作のなかでもズバ抜けて強烈な性格のオルカが、この難局をどうきり抜けるのか。
彼は作中世界の未来に結びつく重大な展望を披瀝(ひれき)するが、はたしてその予言は詭弁なのか真実なのか。
オルカに並ぶカオスなキャラクターであるあいつも生き残っていたことが判明して、いよいよ物語は佳境へと突き進む。
ますます続きが気になる傑作ファンタジー!!
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn