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注意!「このマンガ読んでたら地下アイドルに育っちゃいますマンガ」ベスト3 地下アイドル・姫乃たま【目ききに聞く】

2015/09/22


特定ジャンルに詳しい「目きき」の人たちに、テーマ・著者・出版社……といったカテゴリ別に、必読のマンガ作品を教えてもらうコーナー、その名もズバリ「目ききに聞く」!

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アイカツ、アイマス、ラブライブ……あいかわらずアイドル人気が爆発的な二次元業界! さらにリアルの世界でも、「アイドル」と呼ばれる人々は全国約1万人もいるそうです。
それだけいれば、みんながみんな「等身大でリアルでフツーな国民的美少女」なはずもなく。深ぁくディープなところでは、みんなが会いにくるのを待っている、個性爆発の「地下アイドル」たちもたくさんいたりするわけです(そして、そういうアイドルのほうが、等身大でリアルなんです。ライブ中に手首切ったりとかしますし)。

今回は、そんな地下アイドルのひとりであり、アダルト系ライター、司会、DJ、モデルと、幅広く活動されている姫乃たまさんに「こんなマンガばかり読んでたら地下アイドルになっちゃうよ!!!!」という警告(?)を兼ねた、オススメマンガを教えていただきました。

姫乃たまさんオススメの3作品

はじめまして、姫乃たまです。
下北沢生まれの地下アイドルって、いかにも文化的……いや、ナチュラルボーンサブカルという感じでおもしろみに欠けますよね。ひねりなさ過ぎ、と言いますか。
もちろん、そういった目で見られている自覚はあるのですが、そのじつ、私自身の趣味嗜好と下北沢で育ったことには関係ないとも思っていて……と、アピールしてみても無駄。むしろ「自分のこと客観的に見れていますよ」という斜にかまえた感じが、輪をかけて面倒くさそう、という感じで、閉口せざるをえません。

しかし、さらに口はばったいことを言うようですが、自分がサブカル崩れであることに気がついたのは、本当につい最近のことです。
思えば、種村有菜ファンの同級生たちと趣味がはぐれた時点で気がつくべきだったのです。『神風怪盗ジャンヌ』の華やかで繊細な画風と、単行本の柱に書かれた過剰に謙虚な文章のギャップに違和感を覚えている場合ではなかったのです。今回は自省の念と好奇心にかられて、自分の人生をマンガ3冊で振り返ってみたいと思います。


『ねこ神さま』 ねこぢる

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『ねこ神さま』第1巻
ねこぢる 文藝春秋 ¥562+税
(1997年6月発売)

まず、私が生まれて初めて読んだマンガは『ねこ神さま』でした。
表紙のかわいらしい2匹の猫が、下界に降りてきて神様としての修行をするのですが、なぜかすべて裏目に出てしまうドタバタマンガです。

かわいらしいヴィジュアルと、ドタバタ感、それから4コマ形式にごまかされて愛読していましたが、裏目にでた結果が非常にブラック(人がさくさく死んでいく等々)なのです。
どのくらい小さい頃に読んでいたのかというと、タイトルの「神」が読めなくて、今日の今日までタイトルを作者名の「ねこぢる[注1]」だと思っていたくらいです。


『花咲ける孤独』 山田花子

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『花咲ける孤独』
山田花子 青林堂 ¥951+税
(1993年1月発売)

時は経ち大学生になった私は、初版本や、本の装丁に凝り始め神保町をうろうろしていました。

そんな時に見つけたのが山田花子[注2]の「花咲ける孤独」です。繊細で美しい装丁に包まれていたのは、まさにその装丁のような心を持った作者が描く、世間のずるさや不条理でした。私はまっくらな気持ちになりながら、純粋にこんなにおもしろいマンガがあるのかと驚いたものです。


『まんがサガワさん』 佐川一政

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『まんがサガワさん』
佐川一政 オークラ出版 ¥1,200+税
(2000年12月1日発売)

評価が最低と最高にぱっくりと分かれる佐川一政[注3]のマンガ作品は、『まんがサガワさん』のアートディレクションを手がけたデザイナーのほうとうひろしさんから教えていただきました。
作品としての質が高い一方で、実際の事件がもとになっているという点から、誰しも評価が感情的になってしまう作品です。

彼にマンガ執筆を提案したのが、前述の山田花子が憧れてやまなかった(もはや本人になりたいと思うほどの強さで)特殊漫画家の根本敬さんです。
私自身もすべての事物に対して公平な根本敬さんのファンであります。

そういえば先日、根本敬さんが特集顧問をされている東京キララ社のイベントで青林工藝舎の方と名刺交換をした際に「山田花子の姉です」と、そっと教えていただきハッとなりました。ねこぢるの編集をしていましたよ、とも。
私は本物の母に会った時のような気持ち(経験なし)になり、目眩がしました。

ああ、私を育てたのは「りぼん」でも「なかよし」でもなく「ガロ」だったのね……。

姫乃たま初書籍『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』発売中!

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『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』
姫乃たま サイゾー ¥1,400+税
(2015年9月22日発売)

そんな私はいま「地下アイドル」という職業で、歌をうたったり、文章を書いたりしています。時々は司会をしたり、イベントを主催したり、DJやモデルや……。
この実態のつかめない「地下アイドル」ってなんなのかな、と考える時、私はいつも「居場所」であるという考えにたどりつきます。何度でも。

少女マンガもとてもおもしろかったけれど、「ガロ」を開いた時のむっと臭い立つような個性の強さには安心感があります。
アイドルという大衆文化のなかにいながらいまだに実態を広く知られていない地下アイドルは、マンガという大衆娯楽のなかで異彩を放つ「ガロ」のような存在でもあります。個性的ながら、誰がどのようにヒットするかわからないのも地下アイドルのおもしろさです。
将来、誰かが水木しげるや蛭子能収になれるかもしれません。

私は地下アイドルとして歌ったり踊ったりもしていますが、いつしか文章を書くようになりました。アイドルとして文章を書けるところも、地下アイドルの魅力です。活動内容に制限がないのです。
だから地下アイドルはとてもおもしろい。夢の数や、欲望の強さによって、深海魚のように個性的な女の子たちも現れ、地下アイドルというジャンルはそんな彼女たちに居場所を与えます。

ひと口では言い表せない地下アイドルの魅力、実態、その報われなさや愛嬌を1冊に詰めこんだ『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』が出版されます。
タイトルどおり、私が6年間、地下アイドル業界に潜って歩んで観察してきた業界の実情が書かれています。アイドルに興味がある人だけでなく、いま自分の居場所がここではないと思っている人の、安心できる場所を探すヒントになったらうれしいです。


地下アイドル/ライター:姫乃たま

1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ちの地下アイドル。

16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライターとしても活動するようになる。
以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会など幅広い分野で活動している。

単行本情報

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