日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは『そして、晴れになる』
『そして、晴れになる』第2巻
天堂きりん 集英社クリエイティブ ¥590+税
(2015年8月25日発売)
女だらけの時任(ときとう)家をめぐるオムニバスストーリー。じつに3年ぶりとなる待望の続刊が到着した。
2人の娘を女手ひとつで育て上げた母・紀子を軸にして、結婚間近の姉・窓花、ひとまわりも年下のアイドルに夢中の妹・絵里、50を過ぎていまだ独身の叔母・栄子と、それぞれの人生にスポットが当てられる。
この2巻は、窓花の親友・桜の物語から幕を開ける。
ずっと男からちやほやされてきた、いわゆる“女に嫌われる女”である桜にとって、窓花は唯一ともいえる友人。ただし桜は窓花に対して、学生時代から複雑な想いを抱えていた。
窓花の結婚をきっかけに、親友同士が本音をぶつけあうシークエンスに胸が熱くなる。
いっぽう、アラサーにもかかわらず16歳のアイドル歌手“ノギぽん”にぞっこんの絵里を主役にすえた後半戦は、まさかのファンタジー展開。このエピソードだけでも、映画化できそうなほどのドリームが詰まっている。
そんなこんなであいかわらず時任家(とその周辺の女性陣)は、雨の日もあれば晴れの日もある、笑いあり涙ありの毎日を送っているのだが、唯一素性が明らかになっていないのが、栄子と紀子の母(窓花と絵里の祖母)。
このお婆ちゃんも紀子たちが暮らす一軒家に同居しているのだが、非常に影の薄い存在で、どんな性格なのかもわからない。
あの姉妹(栄子と紀子)を育てた母ならば、きっと数奇な人生を送ってきたはず。うーん、気になるなぁ。
天堂先生もお婆ちゃんに関して“描きたい話がある”とのことだが、「気長~に待っていただけると嬉しいです」との保険も。わかりました。次巻も3年をメドにお待ちしておりますよ!
なお巻末に収録された「コットンの足音」も必読。
飼い主を交通事故で失ったネコと、その家族の物語が、死んでしまった主人公の視点で紡がれる。
涙なくしては読めない珠玉の短編です。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしているライター。