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『スズキさんはただ静かに暮らしたい』第2巻 佐藤洋寿 【日刊マンガガイド】

2015/10/15


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー! 今回紹介するのは『スズキさんはただ静かに暮らしたい』。

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『スズキさんはただ静かに暮らしたい』第2巻
佐藤洋寿 徳間書店 ¥580+税
(2015年9月19日発売)


ひとり息子の仁輔(じんすけ)を、身体を張って育ててきた仁美。小さなアパートで、ひっそりと暮らしていた2人だが、10歳を迎えた仁輔の誕生日を祝っている最中、謎のハゲオヤジが襲来!
仁美は殺され、仁輔もその毒牙にかかる寸前、隣人の若い女性=スズキさんが助けに入る。なんとスズキさんは凄腕の殺し屋だったのだ!

こうして息つく間もなく始まった2人の逃避行。
行きがかり上、仁輔を助けたものの、早いところやっかい払いをしたくてたまらなかったスズキさんも、まだまだ幼い10歳児に少しずつ母性が芽生え始め、彼が殺し屋としての足枷になりつつある。

いっぽうの仁輔は、スズキさんのような殺し屋になって、母を殺した悪徳警官たちに復讐しようと奮起する。
昔の自分を見るようで、イラだちを隠せないスズキさんは、思わぬ行動に出る――。

ジョン・カサヴェテスの傑作『グロリア』ライクなハードボイルド設定に、大友克洋を彷彿とさせるニューウェーブタッチがあわさり、重厚なクライムサスペンスが展開されているのだが、疑似母子のくだりはスズキさんのツンデレぶりが前面に出てじつにほのぼのしており、思わず頬がゆるむ。この緩急こそが本作のキモだ。

人を殺すことになんの躊躇もない悪徳警官軍団のなかでも、リーダー格の楠警視はとくに人格の破たんした変人。仁輔にかまけて牙を抜かれつつあるスズキさんには興味がなく、殺し屋として覚醒してから殺したいと考えているのだ。
この2巻では楠警視が能動的に事態を混乱させ、先読み不能になりつつある。はたしてスズキさんと仁輔が静かに暮らせる日は訪れるのだろうか?

巻末にはスズキさんが初めて人を殺す前日を描いた特別編が収録されている。
スズキさんの背景については、まだまだ明かされていない事実が多いので、仁輔と出会う以前のエピソードも長編で読んでみたい。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしているライター。「ルパン三世ぴあ」に参加。10月にスタートするルパン新シリーズの友永秀和総監督にインタビューしました。

単行本情報

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