日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『つきがきれいですね★』
『つきがきれいですね★』第2巻
えだお 講談社 ¥602+税
(2015年9月4日発売)
リアルなんてクソ食らえ。虚構で生きるのが楽しいんだ。現実の生活は、虚構のための代償だ。
ネトゲにこもっている木暮陽介(27)。バイト面接には落ちまくり。親から仕送りも打ち切られ、友達もいない。
唯一の友人は、ネトゲを一緒にプレイしている、「ツキさん」という少女キャラ。プレイヤーの性別は、男か女かはわからない。でも2人で狩りをしている時は至福だった。
ある日、中学2年生の少女に事故にあいそうだったところを救われる。元気な彼女の名前は朝日川美月。
彼女が、じつはツキさんだった。陽介は、怯える。
ネトゲと現実社会をテーマにした作品が昨今増えている。ペルソナ・アバターともいえる仮の姿と、現実の姿が必ずしもイコールではないから生まれるドラマが、魅力だ。
陽介と美月は、ネトゲ内のキャラと現実の姿は、外見は比較的似ている。特にツキさんは明るく純粋。美月も元気でまっすぐに生きている。
ゲーム内では明るい陽介。しかしリアル陽介はというと、極度に自信がない。ツキさんが美月だとわかると、逃げようとするほど臆病だ。
自分で自分を認めるのは、そう簡単ではない。
相手といっしょにいる権利なんて自分にない。いると相手に迷惑だろう。一度そう感じてしまうと、どこまでも自分を卑下するスパイラルに陥る。
しかし、だれかに好意を持たれた時、見方は変わる。相手のことを考えるようになれば、自分を変えようという努力はできるはずだ。
シチュエーション的には、女子中学生にネトゲで出会って好意を持たれて、なんて夢のまた夢のような話。
けれど、大事なのはシチュエーションではない。自らを変える意志を持てるか否かだ。
中学生の美月にも、この問いは投げかけられている。
現実と虚構、最終的にはどちらの世界でも、自分が決断しなければいけない。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」