『ネト充のススメ』第2巻
黒曜燐 KADOKAWA ¥694+税
(2015年7月23日発売)
そもそも「ネト充」とはなんぞや?
このマンガでは「オンラインゲームなどで、ネットコミュニケーションをうまく取って、楽しんでいること」のようだ。
しかしこれが意外と難しい。オンライン上で言葉の暴力をかざされ、傷つくことはとても多い。
主人公の盛岡森子は30歳。それまで高卒で大手会社につとめ、営業課に配属。11年バリバリ働いていたキャリアウーマンだった。
ところが仕事にまったく生きがいを感じられず、そのストレスから脱サラ。30にして、人生初のニート生活を送ることになる。
営業スマイルの反動から、人と話すことが苦手になり、服装にも気を使わなくなった彼女。引きこもり生活まっしぐら。
そんな彼女が出会ったのが、オンラインゲーム。自分が考える一番かっこいいイケメン男子をメイキングし、そのキャラになりきる。
いわゆる「ネナベ」。
オンラインゲームは、現実同様に人間関係に気を使うことが多い。
厄介なのは、仲間同士の嫉妬や恋愛。接している時間が多いだけに、想像以上にその関係は発展しやすく、こじれやすい。
ギルド(ゲーム内のチームのようなもの)内での喧嘩もたいへん。文字チャットだと相手に思いがうまく伝わらない。
もっともヤキモキするのは、自分が話している相手が何者なのかわからないこと。
そもそも男なのか女なのか。何をしている人なのか。なん歳なのか。
そこに踏みこまず、うまく立ちまわれる人が「ネト充」になれる。
森子は、ゲーム開始後すぐに、リリィという女の子キャラクターと仲よくなる。
彼女はものすごく人当たりのよい優しい子。ゆえにかつては、やたら言いよる人がいたり、リアルのことを聞きだそうとされたり、いわれのない嫉妬をうけたりと、たいへん苦労をしていた。
森子は自分がネナベなのを隠しているということもあって、彼女のプライベートにも触れない。ただいっしょに、楽しめればいいなと、純粋に思い続けているだけだ。
だからこそ、みんなに好かれた。これこそ、ネト充だ。
第2巻では現実世界での森子と、ゲーム内で森子の会話が交互に描かれる。
現実も、ネットの世界も、徐々に彼女のまわりは変わり始める。
もし彼女が自分がネナベということをリリィに明かしたらどうなるんだろう。
ネットゲームあるあるもしっかり描かれている作品。笑える話から笑えない話までてんこ盛りだ。
にしても、読めば読むほどリリィさんの、現実の性別が気になる。
聞いちゃダメ、聞いちゃダメなんだ……っ!
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」