365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
10月13日は引越しの日。本日読むべきマンガは……。
『とびだせ漂流家族』
小坂俊史 竹書房 ¥590+税
10月13日は引っ越しの日。
明治元年、旧暦の10月13日(西暦1868年11月26日)に明治天皇が京都の御所から江戸城に引っ越ししたことにちなんで、1989(平成元)年に引越専門協同組合連合会関東ブロック会が制定したものだ。それにしてもこの由来は、ずいぶんと大がかりな“引っ越し”だ。
引っ越しシーズンといえば春だが、秋は気候的にいちばん引っ越しに向いているのでは?
そこで紹介する『とびだせ漂流家族』は、おそらく日本一引っ越しが描かれたマンガ。
全26話、作中の時間にして推定2年以内に30回以上も引っ越しているのだから。
その元凶は転勤族というわけでもなく、気軽に転職をくり返す父。
新しい勤め先を探すとき、近場で探すという発想がないので父の退社は、引っ越しを意味するのだ。しかもこの父、パチンコやギャンブルが大好きで……借金取りに見つかれば、また即引っ越しとなる!
ほわ~んとして見えるけど何があっても動じない母。環境のなせるわざか中学生にして金儲けの才がある長女。小学生の弟は常識人なのだが発言権がないため、暴走する家族についていくしかない……(涙)。
なんともムチャクチャな家族4コマだが、読んでいるうちに自由でフットワークの軽い暮らしぶりに憧れすら覚えてしまう。どこでも生きていけるってカッコいい!
家族は一丸となっているようでけっこう個人主義、それぞれのサバイバル能力が問われる場面も多い。そして、過激なドタバタ引越し劇の果てには、意外にも感動の結末が待つ……。
4コマならではのグルーヴを活かしつつ、ドラマチックな物語を紡ぎ出した名作だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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