『人間でした』
百雷(作)きこのみ(画) 講談社 \463
(2014年6月9日発売)
2013年12月よりDeNAが配信している、iOS & Android用のマンガ雑誌アプリ「マンガボックス(Manga Box)」連載作品が、単行本化。
本作について結論からいうと。
読後感の切なさ、ハンパねえぇぇぇ~!!!
かつて筆者が、ある作家に教えてもらった“うまいSFストーリーの作り方”は、「大きなウソ(設定)はひとつだけ。あとはひらすらリアルに、綿密に」というもの。
本作はまさに、このセオリー通りに作られており、移入しやすい物語となっている。
西暦222X年、日本のとある街には、高くそびえる“溶魂炉”が建っていた。
死んだ人間の魂、もしくは肉体から分離(離魂)してしまった魂を、保存・精製し、移植できる時代が訪れたのだ。
しかし、ものものしい“溶魂炉”も“魂植え(たまうえ)”=魂の移植も、普通の高校生・万波(まなみ)にとっては、遠くのできごと。
それよりも所属する園芸部のことや、サッカー部で駆け回る一砂(かずさ)のほうが、万波にとっては、ずっと気になることなのだ。
だが、夏休みのある日、一砂の体に異変が起こり……。
魂の移植によって“人間でないもの”になった一砂と万波の一週間が、みずみずしく描かれた全8話。
かわいらしいだけでなく、“人間でないもの”の表情を豊かに描く、きこのみの作画も印象的だ。
<文・藤咲茂(東京03製作)>
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。