日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『冗談新選組 風雲児たち外伝〈増補新版〉』
『冗談新選組 風雲児たち外伝〈増補新版〉』
みなもと太郎 復刊ドットコム
(2015年12月16日発売)
マンガ・小説でもひんぱんに取りあげられるほど人気の高い日本史の時代区分は室町時代後期、いわゆる戦国と江戸時代末期、いわゆる「幕末」である。
なかでも「新選組」は、滅びゆく徳川政権のために武士の誇りを捨てず生き抜いた男たちの精神性や、剣の道を極めた男たちの絆あるいは友情が今でも多くの人々を魅了している。
ギャグをふんだんに織りこみながらも意外に(失礼!)歴史に忠実なマンガ『風雲児たち 幕末編』を「コミック乱」で好評連載中のみなもと太郎。彼が2003年に刊行した作品集『冗談新選組』が、新たに短編2本を加えた「増補改訂版」として復刊した。
収録内容は、「週刊少年マガジン」に'72年掲載、みなもと太郎初の時代劇マンガとなった『冗談新選組』をはじめ歴史雑誌「歴史読本」に掲載された「仁義なき忠臣蔵」、さらにボーナストラックとしての短編「慶喜」と「チャカポンくん」の2作。みなもと作品の名物である、細かすぎて見落とされがちなネタも著者本人がちゃんと説明(!)してくれる「脚注」ならぬ「ギャグ注」も健在だ。
さらに、今年のNHK大河ドラマ『真田丸』が快調なすべり出しを見せた劇作家の三谷幸喜が『冗談新選組』の大ファンだったことが縁で実現した対談企画「ややこしい時代をますますややこしくした男たち」も完全再録。当時、三谷が脚本を手がけていた大河ドラマ『新撰組!』の秘話も聞けるのはうれしいかぎり。
個人的に注目したのはボーナストラックの「慶喜」と「チャカポンくん」。特に「チャカポンくん」は、かの「桜田門外の変」で尊王攘夷の急進派によって暗殺された大老・井伊直弼の、意外すぎるほど不遇だった若き日を描いている。
そもそもなんでこんなふざけた(失礼!!)タイトルなのか? 答えは……読めばわかる!
現在連載中の『風雲児たち 幕末編』は、「桜田門外の変」以後の当事者たちのゆくえを描いている真っ最中。変そのものが登場したのは3年前の第21巻だったから……いやはや、『風雲児たち』はまだまだ長く続く超々大河マンガとなりそうだ。
いずれにせよ『冗談新選組』は、みなもと太郎のライフワークともいうべき日本史ギャグマンガのルーツを探るという意味でも非常に貴重なマンガ。ぜひチェックしておきたいところである。
<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。『別冊宝島2394 仮面ライダー』や「仮面ライダードライブ公式完全読本」もやってます。