365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
3月10日は水戸の日。本日読むべきマンガは……。
『光圀伝』第1巻
冲方丁(作) 三宅乱丈(画) KADOKAWA ¥580+税
3月10日は「み(3)」「と(10)」の語呂あわせによる、茨城県水戸市の記念日。
市内には日本三名園のひとつ「偕楽園」や国指定特別史跡「弘道館」を擁し、2月下旬から3月にかけて「水戸の梅まつり」が開催される。
偕楽園内にある約3000本の梅がちょうど見頃なので、行楽に出かけてみてはいかがだろうか?
さて、かの偕楽園や弘道館を創設したのは水戸藩第9代藩主の徳川斉昭だが、水戸にゆかりのある人物で日本史上もっとも有名なのは、斉昭から7代さかのぼった第2代・徳川光圀だろう。
世間的には「水戸黄門」の名で、講談や歌舞伎、はては映画やドラマの主人公としてよく知られている。
水戸黄門といえば“お忍びで諸国をめぐり悪人を懲らしめる”という漫遊譚のイメージがあるが、実際の光圀は行っても日光、鎌倉、房総あたりまでで、いわゆる関東地方を出たことすらないらしい。
フィクションのイメージがそれほど強すぎて、ほとんど知られていない“だれも見たことがない光圀”を描いているのが、『ぶっせん』の三宅乱丈による『光圀伝』だ。
1694年、江戸・小石川の水戸藩邸内。能が上演されている裏で67歳の光圀が手ずから家老の紋太夫を刺殺するシーンから物語は始まる。
うろたえるほかの家臣たちに後始末を命じ、「人をひとり殺すなど 簡単なことだ」とうそぶく“御老公”は、もはや僕たちが知っている水戸のご老公ではない……。
衝撃はさらに続く。
時はさかのぼって1634年、月明かりに照らされた水戸藩邸の森のなかを7歳のお長(=光圀の幼名)が歩いている
。右手には提灯、そして重いものを引きずるように下げた左手の先には、なんと斬られたばかりの生首が!?
あまつさえその生首を今度は……もう、ここからはとにかく読んでほしいとしか言えない!
冲方丁の原作をほぼ忠実にコミカライズしており、僧侶や老翁すらどこかしらなまめかしく描く著者のタッチは、光圀をはじめ登場人物それぞれに強烈な個性を与えている。
手がつけられないヤンキーと化した光圀。そして自分の天命を知る光圀……宮本武蔵も出てきたりして、巻を重ねるたびにその輝きは増していく。
<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、「月刊ヒーローズ」(ヒーローズ)ほかに参加する。『仮面ライダードライブ公式完全読本』やただいま絶賛発売中の「東映ヒーローMAX」もやってます。