『ユンボル -JUMBOR-』第8巻
武井宏之 集英社 \476+税
(2014年7月4日発売)
週刊連載では短期打ち切りの憂き目に遭いながら、「ウルトラジャンプ」でパワーアップして奇跡の復活連載となった本作。重機への偏愛と浪花節とも言える義理人情に熱いキャラクター、そしてチャイルディッシュな下ネタ……と、武井宏之の嗜好とこだわりが詰めこまれている快作だ。
作者の代表作といえば、どうしても『シャーマンキング』が挙げられるところだろうが、ノリとシュミ全開という点では、『ユンボル -JUMBOR-』に軍配が上がるのではなかろうか。
連載中に起こった東日本大震災に酷似した津波被害が、主人公バル・クロウの過去体験として描かれ、建設への強い動機と結びついているといったシリアスなものから、あまりにもバカバカしいエピソードまで、キャラクターを膨らませる手腕は本作でも健在。
それに加えて、劇中でEM(アース・ムーバー)と呼ばれる歩行型重機の描写も非常に魅力的だ。EMの存在によって、いわゆる能力者である重機人間(ユンボル)と、一般人のバトルに緊張感を持たせることにも成功しているのにも注目したい。
特に前巻7巻で、本来はヘタレポジションのニッパーが、「これはひどい」と言わざるをえない下ネタ(褒め言葉です!)も含めて、最高のEM戦を見せているので必見!
最新刊の第8巻では、ながらく行方不明となっていたバルの娘がついに登場。といっても、既刊分で息子のショベルが敵として登場したのと同様、今回も一筋縄ではいかないこじれた状況。
かなり登場人物が増えてきた印象ではあるが、それぞれが埋没せず描かれる安定感は、さすがという感だ。
そして、ここ数巻、やたらダメ人間のニッパーが輝いているのも、個人的には愉快でしょうがない。
<文・大黒秀一>
主に『東映ヒーローMAX』などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。