アングラサブカル系の博物館といっても過言ではない中野ブロードウェイ内にある、ディープな書店・タコシェ。自主制作の本やジン、インディーズ系CDや映像、雑貨といった、一般流通にのらない独自の商品ばかりが棚に並ぶマニアックなショップだ。
強烈な個性を放つ作品があふれるこの空間では、いったいどんなマンガが売れているのか。
「アバンギャルド」という言葉がぴったりな、読者に新鮮な視点を与えてくれる革新的な作品のなかから、店員の中山亜弓さんに、選りすぐりの4作品を伺った!
タコシェ オススメの4作!!
『ライオンの首 呪みちる作品集 1996-2012』 呪みちる
『ライオンの首 呪みちる作品集 1996-2012』
呪みちる 株式会社トラッシュアップ \1,800+税
(2013年4月10日発売)
昨年から常に売れ続けている本作。なんと初版は即完売してしまい、一時期はネットで5000円の値がつくプレミア本になっていました。
本作は、呪先生がホラー漫画家としてデビューする前の1996年の初期作品をはじめ、単行本未収録作品だった24本の短編を収録。本谷有希子先生原作の映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で使用された原画も掲載されています。
呪先生はホラーブームが去った後に登場した漫画家さん。巻末の解説とともに読んでいくと、時代にあわせてホラーのタッチを変えてみたり、どういう媒体で出せるかなど、かなり熱心に研究されていたことがわかります。430ページにおよぶ短編を一気に読むことで、進化し続ける呪作品のプロセスとホラーマンガへの深い愛情が垣間見える気がします。8月11日には呪先生の新刊『人造人間の怪 呪みちる初期傑作選1』が発売されることも決定。当店ではサイン会も実施予定です(くわしくはコチラをチェック!)。
そのほか、呪先生以外のホラーマンガで圧倒的に人気なのが『死人の声をきくがよい』(日刊マンガガイドはコチラ!)。絵柄こそ少女マンガのタッチですが、ホラー系のモチーフが散りばめられていたり、残虐な終わり方だったり……ホラー好きも納得の一冊です。
『パンの漫画』 堀 道広
『パンの漫画』
堀 道広 ガイドワークス \1,380+税
(2014年5月22日発売)
『耳かき仕事人サミュエル』や『部屋干しぺっとり君』など、かなりマニアックなところをついてくる奇才・堀 道広先生の最新作。当店では、表紙に描かれているイメージキャラクターであるドン・コロネオーネのキーホルダーとともに大評判です。
収録されているのはパンにまつわるショートエピソード。その数、なんと101遍!
パン好き夫婦や刑事、ヤクザなど個性豊かなキャラクターたちが、それぞれ偏愛するパンについて熱く語っています。
堀先生のマンガはギャグマンガなのに、爆笑というより「はぁー、なるほどー」と思わず感嘆の声をあげてしまうような、不思議なおもしろさが魅力的。
先生自身もとても変わった発想の持ち主で、以前発表されていた同人誌では、初期作品を今のタッチで描き直すということをやっていました。
まるでミュージシャンが何度も自分の歌を歌うように、漫画家が同じマンガを何度も描くという、その発想にハッとさせられました。マンガでこんなことをするなんて!
その同人誌はあっという間に完売。目のつけどころの斬新さに、いつも驚かされます。
『何故わたしは恋人のCD棚を端から聴き、レビュするようになったのか漫画』 とあるアラ子
『何故わたしは恋人のCD棚を端から聴き、レビュするようになったのか漫画』
とあるアラ子 \400+税
普段まったく音楽を聴かないアラサー女子が、サブカル男子である彼氏の棚にあるCDを漁って一枚一枚レビューしていくブログ「うんいち〜運命の一枚をさがせ〜」更新中の、とあるアラ子先生によるエッセイ同人誌です。
音楽、映像、出版関係で働く人やそのファンのグループ(いわゆるサブカルの人々)と接するようになった主人公が、そのグループの雰囲気に違和感を抱きつつも、自身もその雰囲気に染まっていく様子と、そこから脱するために“表現とはなにか”について悩みぬく、葛藤が描かれています。
業界人と知り合いぶったり、ツウぶったり……そういった人々への厳しい目線や、いつの間にかグループにただ属しているだけで、「世間になにか一言ある人間」みたいになっている自分を嫌悪する描写は秀逸。
昨年発売された渋谷直角先生の『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』は、特別批判的でもない視点から、サブカルの痛々しさという面をありありと見せてくれたと思います。
本作では、そういった渋谷先生が描いた人を主人公にしたうえで、そこから一歩踏み出すためにはどうするべきか、「とりあえず稚拙でもいいから、なにか発信しよう!」と思えるまでが描れます。もともとサブカルに興味のない主人公だからこその客観的な視点や、元カレから見た自分のことを気にしてしまう人間味あふれる姿が、とても魅力的です。
とある先生の作品以外でも、こういった手製本の人気作はたくさんあります。
『名も無き一夜のファンタジー』は、不条理なギャグがおもしろいと話題で、当店でも大人気。作者の窓ハルカ先生は、「週刊少年チャンピオン」などでも連載していた漫画家さんで、8月1日オープンのWEBサイト「トーチ」でも連載が決定しています。
ほかにも、普段「スペクテイター」などで描かれている大谷秋人先生の同人誌『日々マンガ』なども人気です。ドラマチックな展開はありませんが、幻想的なシーンが多く、眺めてるだけで楽しめる一冊です。
『š! #16 「Villages」』
『š! #16 「Villages」』
\952+税
バルト海に面するヨーロッパ北東部に位置する国・ラトビア発祥のコミックアンソロジーです。
毎回ワンテーマで編集されているマンガ雑誌で、今回のテーマは「Villages=村」。
18人の海外の漫画家たちが、さまざまな情景を描いています。
言語がすべて英語で表記されていますが、本書において言葉はあくまで補助的なもの。言葉を排したサイレントな作品や、少ないセリフの作品が多く、英語を敬遠しがちな方でも、行間を補って余りある絵からあふれ出るものを十分に楽しんでいただけます。
本作は16号目になりますが、バックナンバーでは『クッキー缶の街めぐり』の田中六大先生など、日本人も「š!(クース)」に収録されたことがあります。
日本の常識にとらわれない、世界のマンガ表現を覗き見てはいかがでしょうか。
また逆に、当店ならではの外国の方に大人気な日本のマンガもあります。
石川次郎先生の『チンコマン』は、1999年頃に発売されたものですが、いまだに根強い人気がある大ロングセラー作品です。
とてつもない長さのアレをぶんぶん振りまわして敵を討つというファイトスタイルが、外国の方にもわかりやすくてウケがよいのかもしれません。
一般流通はしていませんが、世界に通じる(かもしれない)一冊です。気になる方は、ぜひタコシェでお買い求めください。
タコシェからサイン会のお知らせ!
『人造人間の怪 呪みちる初期傑作選1』の発売を記念して、2014年8月17日(日)午後3時より呪みちる先生の発売記念サイン会を行ないます
※タコシェにて本書をお求めの方に整理番号つきの参加券を配布いたします。 くわしくはコチラ!
「このマンガがすごい!WEB」をご覧くださった皆様へのアンケートのお願い
ただいま、宝島社『このマンガがすごい!WEB』では、よりよいサイトの制作と運営のため、アンケートを実施しております。
アンケートにご協力していただけるかたは、下記リンク先にある専用のアンケートフォームから回答していただければ幸いです。