日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『パパと親父のウチご飯』
『パパと親父のウチご飯』 第5巻
豊田悠 新潮社 ¥580+税
(2016年9月9日発売)
父子家庭の2組の親子がルームシェアをしながら慣れない料理に挑戦する『パパと親父のウチご飯』もいよいよ5巻目。
登場する料理はうどんにロールキャベツ、手作りアイスと簡単なものばかりだが、子どもがお手伝いするシーンがかわいらしくてほのぼのする。
父親×子どもの料理マンガといえば最近大人気なのが『甘々と稲妻』だが、『パパと親父のウチご飯』は父子がダブルで登場するうえに、母親も(たまに)登場する。
「パパ」ことマンガ編集者の昌弘(まさひろ)と無口な清一郎(せいいちろう)、そして「親父」こと整体師の哲(てつ)と活発な愛梨(あいり)という、2組の父子が共同生活を送る。
第5巻では、いつも引っ込み思案な清一郎が子ども心に一大決心。いっしょにプリンを作ったのをきっかけにケンカをしていた愛梨と仲直りできた経験から、離婚した両親にもいっしょに料理をしてもらおうと仕向ける。
久しぶりに家族そろって作った夕食は、清一郎の大好きなロールキャベツだ。付けあわせのりんごサラダもおいしくできて、清一郎は大満足。だけど、「みんなでごはんつくったから これでなかなおりだよね」の言葉に、母親からの返事はない。
なんでパパとママは仲直りできないのか、清一郎にはわからない。わからないけれど、現実はつきつけられる。母と暮らせない寂しさは、幼い胸にはあまりに大きい。
胸の奥には、家族にも届かない場所がある。人間はみんな土壇場ではひとりだけど、愛に支えられた暮しは心を強くする。
昌弘は父親として、清一郎を信じて見守ることを選んだ。
つたないけれど、あたたかい2組の父子の日常生活。
完璧な家族はどこにもいないけれど、そのまんなかにある愛の力を信じてみたくなる。
<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。