日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ニーナさんの魔法生活』
『ニーナさんの魔法生活』 第1巻
高梨りんご ほるぷ出版 ¥600+税
(2017年1月12日発売)
魔法学校に通う少女、アイリス・バーベナー。
彼女は実地見習いとして、大森林の奥に住む魔女ニーナのもとをおとずれる。
世界最強といわれるニーナは、2つ以上の魔法を勘で難なく組みあわせて利用するとんでもない女性だ。感心して見ていたのだが、ニーナは日常生活も魔法の扱いも超ずぼら。
世界一だらしない魔女だった。
ほんわかのほほん女性ニーナと、生まじめ優等生アイリスの生活が楽しい魔法日常コミック。
日常といっても、アイリスが出会う出来事は、本のなかですら見たことないものばかり。
細かく描きこまれた不思議な世界は、アイリス同様に見ていてドキドキする。
しかしアイリスが出会うのは、ステキなことばかりじゃない。
薬を届けに行った時、アイリスは酔っぱらいのゴロツキに囲まれる。
路地裏では、街中を魔法でのぞき見する違法スレスレの人間に出会う。
町には戦争移民でひもじい思いをしている幼子がたくさんいる。
「この人たちにはこれが日常なんだ
なのに本の上のそれと同じように捉えて
わかった気でいた」
アイリスが目にした、ハッピーなニーナの魔法生活も、戦争で殺しあいをして日々食べる物に困っている人々も、すべて等しく、日常。
本の知識から飛び出して、現実世界で何ができるかをかみしめていく物語だ。
酸いも甘いも触れてみないと、いくら本で読んでも、世界のことはわからない。
ヤマジシを取ってきたニーナ。
彼女はアイリスの目の前で、血まみれになって解体する。食べるためだ。
これが、「知る」だけではわからなかった、現実だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」