複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。
今回は、「2月14日は日本国民ならだれでも知っている“あの日”です」について。
『ふんどしの話』
新穂栄蔵 JABB出版局 ¥1,505+税
(1990年8月発売)
あしたは特別スペシャル・デイッ!(1年ぶり二度目)
本日2月14日が何の日か、もうおわかりですね?
そう、きょうは「ふんどしの日」である。
「2(ふん)」と「14(どし)」の語呂合わせで「ふんどしの日」なんだから、安直といえば安直だが、ものごとを伝えるにはそのストレートさこそが大事。
なんでも「一般社団法人ふんどし協会」は、毎年ベストフンドシストアワードを開催し、各界著名人のフンドシスト(ふんどし普及に貢献した著名人)を表彰しているとか。
みなさん、ふんどしてますか(サ行変格活用)?
おりしも先週2月9日には愛知県稲沢市の国府宮神社で、ふんどし姿の男たちが厄落としのために激しく体をぶつけ合う奇祭「国府宮はだか祭」が開催され、およそ15万人もの見物客が訪れたという。
今や時代はふんどしを求めているのだ。
当然、マンガの世界でも、これまで様々なふんどしが描かれてきた。
といったわけで今回は、現代におけるふんどしの諸相をマンガで見ていこう。
『花の慶次 -雲のかなたに- 文庫版』 第4巻
隆慶一郎(作) 原哲夫(画) 徳間書店 ¥657+税
(2009年6月30日発売)
さて、ふんどしマンガの代表格といえば歴史マンガだ。
時代物や歴史物に登場するキャラクターだったら、たいていはフンドシストなのだが、そのなかでも白眉は『花の慶次 -雲のかなたに-』(原作:隆慶一郎、作画:原哲夫)の主人公・前田慶次である。
「第六十五話 喧嘩無礼講!の巻」では、従者の捨丸と岩兵衛の悪口をいわれた慶次は、「喧嘩に身分の上下なし」といい放ち、発端になった公家をぶん殴り、通行人を巻きこんでの大喧嘩をはじめた。
喧嘩が終わり、岩兵衛が慶次のもとを去ろうとすると捨丸が引き留め、岩兵衛も家来にしてほしいと慶次に嘆願。
これに対して慶次は「ひとつだけ条件がある」という。その条件は「褌(ふんどし)だけはいつもきれいにしておけ」であった。
どれほど着飾っても、戦場で死ねば身ぐるみはがされて、残されるのはふんどしひとつ。いくさ人としての心意気と、岩兵衛や捨丸への思いやりを内包した言葉といえる。
『花の慶次』には「だがそれがいい」など数々の名言があるが、ふんどしでも名言を生み出していたのである。
『ドラえもん』 第28巻
藤子・F・不二雄 小学館 ¥429+税
(1983年7月28日発売)
ふんどしマンガ界のレジェンドは、みんな大好き『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)の野比のび太だ。
「ニンニン修行セット」(てんとう虫コミックス28巻収録)では、ドラえもんから『忍者ハットリくん』のマンガを手渡されたのび太が、忍者に憧れるところから物語が始まる。F作品(『ドラえもん』)内にA作品(『忍者ハットリくん』)がマンガとして登場してくるという、なかなか貴重なエピソードである。
ドラえもんがのび太のために出した道具「ニンニン修行セット」は、忍者になれる道具ではなく、忍術修行のための道具。22世紀の人はなぜこんな道具を作ろうと思ったのかは不明だが、未来での忍者への憧れは現代よりも強まっているのかもしれない。
このセットのなかの「疾風百里行の術」修行は、やたらと長いふんどしを締めて、布が地面につかないように走るというものだ。本来の忍者修行だったら頭巾に布をつけて走るところだが、この道具ではふんどしになっているのがミソ。
このあたりの“本来の忍者を微妙に間違って解釈している”具合が、むしろ22世紀の道具っぽい。
ちなみに『忍者ハットリくん』では、第1話で三葉(みつば)家にハットリカンゾウがやってくる。
天井で眠るハットリくんの姿を不安視したケンイチは、鎖で布団を天井にくくりつけてハットリくんを眠らせる。そこでハットリくんは十方手裏剣型のおねしょをしてしまうのだが、布団を干すお母さんの横に立つハットリくんはふんどし姿。第1話からふんどし姿を披露するという、生粋のフンドシストである。
『帝一の國』 第4巻
古屋兎丸 集英社 ¥476+税
(2012年11月2日発売)
4月29日に全国東宝系で公開される実写映画『帝一の國』は、古屋兎丸の同名マンガが原作。主演の菅田将暉をはじめ、野村周平、志尊淳ら出演キャストたちが裸にふんどし一丁の姿で太鼓を叩いている「フンドシ太鼓」の写真が公開され、はやくもアツイ注目を集めている。
本作の主人公・赤場帝一は「総理大臣になり自分の国を作る」という壮大な野望を抱いた高校生。
その第一歩として、政財界のトップを数多く輩出してきた超名門校・海帝高校で生徒会長になることを決意する。一年一組のルーム長となった帝一は、まずは手始めに、二年の氷室ローランドを生徒会長にするための活動を開始するのであった。
例の「フンドシ太鼓」のシーンは、文化祭「海帝祭」の開会式で描かれる(コミックス4巻)。生徒会長選挙の工作のために、海帝祭が政局の場と化していくのだ。
基本的にはギャグマンガだが、政局の場面では現実の政治に対する風刺としての側面もあり、ウィットとアイロニーにも富んだ作品である。
マサキッス・菅田将暉の「フンドシ太鼓」にメロメロになる前に、まずは原作でストーリーを把握しておこう。
『血まみれスケバンチェーンソー』 第1巻
三家本礼 KADOKAWA ¥640+税
(2010年3月25日発売)
近年は実写映画『血まみれスケバンチェーンソー』(原作は三家本礼の同名マンガ)で、主演の“だーりお”こと内田理央がふんどし姿を披露して話題をさらったのも記憶にあたらしい。すばらしい!
もともとふんどしは「男性のもの」との固定観念が強かったが、現在は女性用のふんどしも商品展開が進み、ふんどし女子も増加中らしい。
ジェンダーレスやダイバーシティ(多様性)こそ社会の豊かさである以上、これからもふんどし女子の急増をせつに望みたいところであるッ!
というわけで、きょうバレンタイン・デーに義理だろうが本命だろうがチョコレートをもらった男性諸君。お返しにふんどしを贈ってはどうだろうかッ!!
……まあ、ちゃんと信頼関係ができていない相手に下着を贈るとセクハラになる危険性があるので、くれぐれもご注意を。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama