日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『高橋葉介傑作集 Uボート・レディ』
『高橋葉介傑作集 Uボート・レディ』
高橋葉介 ぶんか社 ¥1,300+税
(2017年2月10日発売)
『学校怪談』、『夢幻紳士』シリーズで知られる高橋葉介の傑作選シリーズ。
今年1月に発売された『海から来たドール』と奇しくも同じように、本作も潜水艦の潜望鏡から見える景色から物語は始まる。
小澤さとるの『サブマリン707』を小学生時代に読んで以来、潜水艦の魅力にとり憑かれてきたという著者の趣味全開の爽快な海洋アクション作だ。
今回の潜水艦は作品名のとおり、第一次世界大戦~第二次世界大戦に建造されたUボート。元自衛官の黒瀬がカリブ海でサルベージしたUボートを、美少女クララがシージャックする。
深海の緊張感と、高橋葉介ワールドならではの愛らしいキャラクターの相性がすばらしい。
なんとクララは、かのヒトラーの孫娘。シージャックされたUボートは、クララを「姫」と呼ぶナチスの残党の手にわたることに。
彼らはUボートを手に入れて、外洋のただなかに浮かぶ「宝島」を目指していた。
骨董品級のUボートにむち打ち、深海の海流を乗り継いでバミューダ海域の「宝島」に着いた一行は、ヒトラーの姿をした謎の部族に囚われる。
はたしてクララと黒瀬たちの運命やいかに……!
往年の名作アクション映画や活劇マンガのような軽快なテンポ、簡潔なストーリー、適度なレトロ感、前巻に引き続き、高橋葉介ファンにはたまらない傑作だ。
本作も、前巻と同じく1980年代のいくつかの媒体に発表された作品をコンパイルした1冊。
収録作品は2008年宙出版刊行の『高橋葉介ベストセレクション Uボート・レディ ワイド版』と同じ。今回も、ぶんか社版は作品のみの収録となっている。
1985年の白泉社版は表題作のみ重複。『WOMEN'S ISLAND』は、同1985年にほかの「女性をテーマにした短編」と合わせて同名の短編集が編まれており、豊満なカラー表紙を見ることができる。
1990年の朝日ソノラマ『高橋葉介作品集10 腸詰工場の少女』および1999年の朝日ソノラマ文庫『ヨウスケの奇妙な世界15 腸詰工場の少女』には『Uボート・レディ』全5話が収録されている。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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