日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『アウトキャスト』
『アウトキャスト』 第1巻
ロバート・カークマン、エリザベス・ブレイトウエイザー(作) ポール・アザセタ(画)
椎名ゆかり(訳) 誠文堂新光社 ¥2,600+税
(2017年1月17日発売)
「アウトキャスト」とは、「のけ者」の意味。逆に「キャストアウト」は「出て行け!」となる。
本作は悪魔祓いと悪魔憑きがテーマになっているが、作品の序盤から悪魔祓いを依頼された牧師が、少年に憑依した悪霊に向かって「キャストアウト!(出て行け!)」と叫んでいる。
幼い頃に母が悪魔憑きに遭い、大人になって結婚し、子どもが生まれたら、その妻が今度は悪魔憑きになってしまったカイル。
彼は、かつて妻にとり憑いた悪霊から息子を守るために振るった暴力のせいで前科者となり、若くして世捨て人のように生きている。
鬱々とした日々を送るカイルは、少年に憑いた悪霊を祓うことに成功する。
妻子に対する暴行の疑いをかけられ、悪魔憑きに遭遇したと公言するわけにもいかず、家庭内暴力の加害者として隣人から人でなしとみなされる状態と、悪魔憑きの現場で悪霊を祓う瞬間とのギャップがせつない。
社会的には“のけ者”だが、悪に対峙する時には力を発揮できる、しかしその力は公言できない。
そして、悪霊たちが語る謎のキーワード「大融合」。
アメリカ社会に生きる人々の生々しい生活臭と、彼らが苦しみをかみ潰す時の表情、希望と失望と疑心暗鬼が入り混じる、オフビートなのに緊迫感のある世界観はさすが『ウォーキング・デッド』の原作者だとうならされる。
この物語はどうなっていくのか、続刊が楽しみだ。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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