日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『おかあさん(10さい)と僕。』
『このマンガがすごい!comics おかあさん(10さい)と僕。』
根雪れい 宝島社 ¥640+税
(2017年4月19日発売)
団地に引っ越してきた、小学生4年生(10さい)の文月春(ふみづき・はる)。
平和な生活が始まる、と思いきや突然。母親が同い年くらいの女の子になっていた。
非常事態だが、意外とうろたえていない2人。
「大丈夫 僕はおかあさんと一緒に ここで暮らしていくんだ」
小学4年生。思春期に入る直前、年齢が2桁台に入り、“キッズ”からは卒業するくらいの、微妙なお年頃。
春は母親が子ども化したことに対して、作中ではあまり不安を見せない。
むしろ、一昨日前まではいっしょにお風呂に入っていたのに、子どもになってからは拒否するようにすらなった。
若返った母親は、強烈にポジティブで、悩んでる様子をいっさい見せないのがこの作品の特徴。
それどころか「小さくなっててよかった」という始末。知らない人と会っても、この状況をペラペラしゃべりそうなほど明るい。
春の心は、別に頑丈なわけじゃない。
唯一、仲のいい従姉妹の夏ねえにだけ、さみしい本心を打ち明けている。
まだまだ甘えたいざかりの春。
風邪をひいて寝こんだ時。おかあさんがまだ普通だった頃。
彼は気弱な甘えん坊として描かれている。こっちが素なんだろう。
母が小さくなったからといって、特別な気負いはない。でも自然にがんばっているのが見てとれる。
繊細に描かれた、ささやかなつま先立ち。
クラスメイトで春に好意を寄せる、気の強い少女・日高杏。
委員長の杏のほうが春よりも背が高く、運動もできる。
だけど春のしっかり落ちついている姿を見て、気になってしかたない。
彼女のやきもき度は、春の成長とリンクしていく。
老婆が転生して幼稚園児として暮らす『老女的少女ひなたちゃん』や、ヤクザの親分がセーラー服美少女に整形させられた『指定暴力少女しおみちゃん』、亡くなった母が小学生の姿で現れる『10歳かあさん』など、大人が子ども化する作品は数多く出ている。
まわりのキャラクターはそれによってどう変化していくのか、比較してみるとおもしろい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」