日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『もはや私は貴腐人です』
『もはや私は貴腐人です』 第3巻
鶴ゆみか 講談社 ¥680+税
(2017年3月17日発売)
pixivでブックマーク35,000以上を記録し、見事に人気1位作品となった“シアワセ腐女子生活マンガ”に3巻が登場だ。
「この世はすべて、“攻め”と“受け”でできている!」といいきる腐女子の熱く真剣な思いを余すことなく描き、あまりにも赤裸々に描ききってしまったことで、悲しいかな、センセーショナルなまでのBL偏愛っぷりが「もう笑うしかない」域にまで到達したのが、このマンガである。
さて、あいもかわらず“この世のすべてに萌えてしまう腐女子4人”が、仕事の時間以外は顔を突きあわせ、今日も明日も明後日も、ゆる~く激し~くBL三昧。
本巻では初っ端から、かの有名な江戸川乱歩の文学作品『人間椅子』の話(椅子職人から「あなたが座っている椅子の中に私という人間がいますよ」……という手紙を受け取る怪奇話)を発端に、私だったら「麦茶になりたい」「ベッドになりたい」……と、ヒトでない何かになってまで、自カプの愛の行く末を見届けようとする4人の妄想が大爆発。
さらには、腐女子専用老人ホームに過去からの手紙、そして4人には禁断の結婚式などなどなどなどをテーマに、各自の勝手極まりなく、しかし共感できてなにげに深~いBL持論がテンション高く展開される。
しかも、まっとうな腐女子にはいかにも危険人物的な“オープン腐女子”や、「腐女子を制する者はコミックスを制す」と豪語するアブない書店員なども続々登場。さしもの4人も生き方、人間関係考え直すか!?……と思いきや、この4人のあまりの雑食的BL気質が、いまさら他人に揺るがされることなんてないんだけどね!
ときには甘くときにはせつなく、ハードとソフトを己の脳内で自在に操り、妄想が妄想の連鎖を呼ぶ“ド腐れ妄想”は、読み始めたらもう止まらない!
あなたの意に反して(?)、ゲラゲラと声を出して笑ってしまうこと間違いなしだ。この本の一番恐ろしいところは、読みながらつい「あるある!」「わかるわかる」と頷いてしまう自分に気づいてしまうこと、かもしれない!
<文・藤咲茂(東京03製作)>
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。