365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月23日は世界図書・著作権デー。本日読むべきマンガは……。
『バーナード嬢曰く。』第3巻
施川ユウキ 一迅社 ¥619+税
本日4月23日は「世界図書・著作権デー」。これはユネスコ(国際連合教育科学文化機関)によって定められている国際デーのひとつで、書籍とその著作者たちに敬意を表し、読書の楽しみを人々に伝えようというのが趣旨の記念日である。
今日がその記念日となったのは、劇作家のシェイクスピアや『ドン・キホーテ』で知られるミゲル・デ・セルバンテスなど、多くの作家の誕生日や命日である運命的な偶然に因むものだが、その記念日を国連で提唱したスペインでは、もともとセルバンテスの命日が「本の日」として定着していたとのこと。その日は女性から男性に本を贈り、男性からは赤いバラを贈る風習があるそうで、個人的には「そこはお互いに本を贈りあうのでよくね?」と思わないでもないのだが、本を贈る記念日は日本でも定着するといいなと思ったりする次第。他人のために本を選ぶのに頭を悩ませるのって、けっこう楽しそうじゃないですか?
さて「読書の楽しみを人々に伝える」のがこの記念日の主目的となると、まさにピッタリのマンガとしてあげておきたいのが『バーナード嬢曰く。』。
2016年にはショートアニメ化もされ、当サイトでも紹介の機会も多いのでご存じの方が多いとは思うが、いちおう作品の概要を説明しておくと、本作は「本を読まずして読書通に思われたい」という主人公・町田さわ子のしょーもない願望から始まるギャグ作品。
そんな彼女を中心に「あえてひと昔前に流行した本を古本屋で買うのが好き」というヒネた性格の男子学生・遠藤、その遠藤にほのかな恋心を抱く図書委員にしてシャーロキアンの長谷川スミカ、そしてSF小説が好きすぎて温度差がヤバい神林しおりといった仲間たちが集うのだが、放課後の図書室での雑談がそのまま作品になったようなノリは、青春の貴重な時間を主にダベリで過ごした人には刺さること間違いなし。そして、さわ子が驚くほど読書に集中できない性格であるがゆえ、あまり読書習慣がない人にもメチャメチャ共感できることが多いのが、本作のすばらしいところである。
初期の頃は「名著の中の名言」にスポットが当てられることが多かった(それだけいってれば、いかにも読んでるふうに思われるので)のだが、読書好きの友人たちに囲まれているせいか、さすがのさわ子もなんだかんだいいながら本を読むようになっていくのも微笑ましいところ。そして作中にもあるとおり「誰かが楽しそうに好きな本を語る姿がいい」のが本作のキモであり、それに感化されて、こちらも話題にあがっている本を読んでみたくなること請けあいである。
そんな訳で、もちろん最初から読んでいただきたい作品ではあるが、とりわけ今日の記念日には、いつのまにやらさわ子がすっかり読書家と化している第3巻がオススメ。特に彼女がつたないながらも自分の言葉で『羆嵐』の魅力を熱弁するくだりは、その読書家としての成長ぶりに軽く感動を覚えるほど……かも?
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。