365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月30日はアドルフ・ヒトラーと恋人エヴァ・ブラウンが自殺した日。本日読むべきマンガは……。
『講談社漫画文庫 デビルマン』 第3巻
(「ウィーンの晩い春」所収)
永井豪・ダイナミックプロ 講談社 ¥600+税
1945年4月30日、ドイツ第三帝国総統アドルフ・ヒトラーはベルリンの総統地下壕の一室で自殺を遂げた。
第二次世界大戦末期、東西から連合軍がせまり、すでにソビエト軍はベルリン市内に侵入して、敗色濃厚と知ったヒトラーは、前日に遺書を用意したのち、長年の恋人エヴァ・ブラウンとたった2人だけの結婚式をあげて、彼女とともにその波乱に満ちた人生の終止符を打った。
「ドイツ人はわが運動に値しないことを自ら証明した」と最期に語った彼の心中は、いかばかりだっただろうか……?
ある意味非常にドラマチックな生きざまを見せたヒトラーだけに、本コーナーでもこんな日やこんな日に取りあげられた頻出人物ではある。
今回ご紹介する「ウィーンの晩(おそ)い春」にも、ヒトラーをモデルにしたキャラクターが登場する。永井豪の代表作『デビルマン』が「週刊少年マガジン」での連載を終了してしばらくたった1979~1981年の「週刊少年マガジン増刊」において掲載されたサイドストーリーで、のちに『新デビルマン』として単行本にまとめられたなかの一編である。
悪魔(デーモン)ハンターとしての運命にいざなわれて特殊な時間が流れる異次元をさまようデビルマン・不動明とその親友・飛鳥了は、1913年5月のウィーン・メルデマン街のアパートにタイムスリップする。
了はアパートに住む若い画家・アドルフを訪ねてきたユダヤ人画商のハーニッシュからデーモンの匂いを感じとり、彼らのあとを追い始める……。
2つの大戦のさなかで激動するヨーロッパを舞台に、人間世界に戦火を巻き起こそうとたくらむデーモン族とデビルマンの戦いを描きつつも、あらゆる悪事の根本には必ず“人間の心”があるという『デビルマン』のテーマを色濃く押し出した傑作。
短編につき今回はこれ以上のネタバレは避けておくので、続きはぜひともコミックスをお読みいただきたい。
本作はもともと『新デビルマン』というタイトルで1981年に単行本収録された作品だが、著者の漫画家生活20周年を記念して出版された『デビルマン 豪華愛蔵版』ではあらためて第3巻に再編集されている。
同じく30周年記念刊行の講談社漫画文庫版(1997年)が同じ内容を収録している、ほか2009年刊行の文庫新装版も出ていて、現在比較的入手しやすいのはこれのようだ。
<文・富士見大>
編集・ライター。歴史SLGメーカー出身で、歴史はもちろん特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わる。最近のお仕事は「東映ヒーローMAX Vol.55」です。