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7月29日はアドルフ・ヒットラーが国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)党首に就任した日 『ひっとらぁ伯父サン』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/07/29


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『ひっとらぁ伯父サン』
藤子不二雄A 朝日ソノラマ \602+税


1921年の本日は、あのアドルフ・ヒットラーが国家社会主義ドイツ労働者党……いわゆる「ナチス」として知られる政党の党首に就任した日(※現在では「ヒトラー」という表記が一般的だが、多くのマンガ作品での表記に合わせて、ここでは「ヒットラー」で統一させていただく)。
その後、彼が党内で極めて強い権限を持ったまま、1933年に政権獲得。そしてドイツに独裁体制を敷いたことから様々な悲劇が起きたことを考えると、人類の歴史においてたいへん重要な日かもしれない。

とまぁ、シリアスな歴史の話も大事なのだが、ひとまずここではマンガの話にシフトしておこう。
ヒットラーは強烈すぎる存在感ゆえ、その生涯を描いた作品や、彼をモデルにしたキャラクターはマンガの世界でも多いのである。たとえば、史実に忠実な作品としては、水木しげるの『劇画ヒットラー』が特に有名だろう。ほかにも、ヒットラーを含んだ3人のアドルフが話の主軸となる手塚治虫晩年の名作『アドルフに告ぐ』から、腕利きの殺し屋がヒットラーのクローンだという叶精作の『ヒットラーの息子』のようなトンデモ路線のものまで、関連作品は非常に多い。
しかし、なかでもキャラクターとして一度見たら忘れられないほどのインパクトを放っているものといえば、藤子不二雄Aのブラックユーモア路線を代表する一作『ひっとらぁ伯父サン』も忘れるわけにはいきません。ドーン!!

何がすごいってこの作品、じつは話の構造的には「平凡な少年の住むふつうの家に、奇妙な住人が下宿にやってくる」というものであって、その点では『オバケのQ太郎』『ドラえもん』となんら変わりがないのである。
しかし、やってきたのが愛嬌のあるオバケや未来の世界の猫型ロボットではなく、ヒットラーそっくりの怪人物だったばかりに話はとんでもなくヤバい方向へ……。
ワーグナーを心から愛し、少年たちに規律正しい行動へと導いていくいっぽうで、大人たちは小さな快楽をきっかけに破滅へ追いこまれ、さらにワーグナーの悪口を言った近所の住人は「焼却処分」されてしまうというオッソロシイ結末を迎えることになってしまうのである。ギニャ~!!

このブラックにもほどがある路線としては、喪黒福造で知られる『笑ゥせぇるすまん』が特に世間での認知度が高いと思われるが、より「理由のない悪意」の純度が高い本作の衝撃も、多くの人たちに知っていただきたいところ。
今ならまだ、オリジナル発表時から少ししか言葉が差し替えられていない中公文庫版普通に読むことができますので!



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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