365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが 「きょうのマンガ」です。
5月15日はストッキングの日。本日読むべきマンガは……。
『うめざわしゅん作品集成 パンティストッキングのような空の下』
うめざわしゅん 太田出版 ¥1,400+税
1940年5月15日、アメリカの化学会社デュポンが、初めてナイロンのストッキングを発売した。
ストッキング自体はそれまでも存在したが、それまでアメリカのストッキング市場は日本製の絹物に独占されていたそうだ(日本の輸出は戦前まで生糸が大半)。
しかしストッキング革命ともいうべきナイロン製登場の衝撃はすさまじく、いっきにメインストリームとなる。
てなわけで、きょうのマンガは、「このマンガがすごい!2017」オトコ編4位にランクインした『パンティストッキングのような空の下』を紹介しよう。
長靴下と呼ばれていたストッキングと違い、パンティストッキング(パンスト)はつま先から腰までを1足で覆う衣料。
本作はストッキングの発売から23年後にパンストが販売されるまでを追った渾身のドキュメンタリー……ではなく、長らく日の目を見なかったコミックス未収録のうめざわ作品を収録した傑作短編集である。
表題作の主人公は、ペラペラの仲間意識と共感の押しつけとイベント至上主義と陰湿なイジメが混在した学園生活から、見事にハミ出てしまった2人の男子高校生。
強烈な皮肉屋の三上と、デカい図体で常にちんちんをイジっているひろしだ。
そんな凸凹コンビがパンストのような寒空を見あげながら、「テポドンでも何でも落ちてくりゃいーんだ」とうそぶく日々を鮮烈に活写する。
また本作には12年後、29歳になった2人を描いた新作短編「平成の大飢饉予告編」も収録されており、これがまたなんともやるせなく、味わい深く、下半身をムズムズさせる快作なのである。
パンストの伝線を見せつけて、ひろしを誘惑するシングルマザー・サクラのヒロイン像たるや!
ほかの短編も何年たとうが読む者の心に刺さり続ける強度を持った作品ばかり。
未読の方はこれも何かの縁だと思って今すぐ書店に駆けこみ(もしくは電子書籍の購入ボタンをクリックし)、寝食を忘れてむさぼり読んでほしい。きっと忘れられない“ストッキングの日”になるはずだ。
ちなみに“パンティストッキング”とは和製英語であり、イギリスでは“タイツ”、アメリカでは“パンティホース”と呼ぶそう。
近年では“パンスト”といういいかたがダサい、野暮ったいという女性も増え、日本でも“タイツ”と呼ぶのが主流になりつつあるのだとか。
いやいや、やっぱりあれはパンティ+ストッキング=パンティストッキング以外の何ものでもないですよね。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。パンストは男のロマンです。