『フロイトシュテインの双子』
うぐいす祥子 集英社 \514+税
(2014年8月20日発売)
本作は、ひよどり祥子名義の活動(『死人の声を聞くがよい』など)でも知られる、ホラーマンガ界の俊英の初短編集。
血しぶき舞い散る陰惨なビジュアルながらも、どこかコメディじみた軽快さを感じさせる、独特の世界観は今回も遺憾なく発揮されている。
注目は、邪悪な双子に翻弄される、平凡な家庭教師を描く表題の連作『フロイトシュテインの双子』。
類まれなる美貌の双子・カケルとミチルは、人や動物を傷つけることになんの躊躇もない、悪魔的な本性を持っている。家庭教師の青年・桜井に対して、2人は様々な「イタズラ」を仕掛けてくる。
イタズラ……というとかわいげがあるが、その実態は、ブードゥーの魔術の人形で体を操り、走行中の車に激突させてみたりとか、魔導書から邪神を呼び出して、生け贄として捧げようとしたりとか……「凶悪!」の一語に尽きる内容ばかり。その結果、なんと第1話にして、桜井は命を落とし、ゾンビとして蘇生されるという仰天の展開に。
とはいえ、ただただグロテスクな物語に終始するわけでもないのが、この連作の魅力でもあり……。
「青春とヒロイン」というテーマのとおり、爽やかで、どこか切ない物語を描いたものが多い集英社「アオハル」掲載作品のなかで、一際異彩を放つ本作。少年少女の残酷なまでの無邪気さもまた、ひとつの青春……なのだろうか? アオハルコミックスレーベルの「毒」を受け持つ本作、ホラーが苦手な人にこそ読んでもらいたい。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。