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『このマンガがすごい! comics 佐武と市捕物控 闇の片脚』 石ノ森章太郎 【日刊マンガガイド】

2017/05/16


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、
『このマンガがすごい! comics 佐武と市捕物控 闇の片脚』

  
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『このマンガがすごい! comics 佐武と市捕物控 闇の片脚』
石ノ森章太郎 宝島社 ¥590+税
(2017年5月17日発売)


先月の『野ざらし』『隅田川物語』の同時リリースに続いて、「このマンガがすごい! comics」レーベルよりこのたび発売されるのが本作だ。

ファンのなかでも“石ノ森マンガの最高傑作”と大きな支持を集める時代劇ミステリー『佐武と市捕物控』。 その誕生エピソードや当時の出版事情についてはこちらのレビューに詳細が述べられているのでそちらをお読みいただくとして。

下っ引(同心配下の捜査官である岡っ引のそのまた手下!)の佐武と、盲目のあんまにして抜刀術の達人・松の市が江戸の町をおびやかす殺人事件に挑む“バディもの”の側面を持つ同作品は、映画から浮世絵に至るまで様々なアートの手法を積極的にマンガに取りこんだ著者のまさに本領発揮ともいえるものだ。
非マンガのテクニックをもってマンガの新しいありようを見せつけた著者の魂は、むしろ映像ジャンルのクリエイターの心に火をつけたのではあるまいか?
至極早い時期でのアニメ化や3度にわたる実写ドラマ化もうなずけるというものだ。

いわゆる“傑作選”第3弾にあたる本作は、その実写版の最近作にあたる2016年放送のBSドラマ 「佐武と市捕物控 冬夏の章」の原作となった傑作「氷の朔日(ついたち)」と「椋鳥」を収録。
「冬の章」の原作が「椋鳥」、「夏の章」が「氷の朔日」となるわけだが、「椋鳥」では毒酒による大量殺人事件のかげで市中にはびこる大店(おおだな)と寒村からの季節労働者のあいだの格差を、冬の江戸の風物詩をからめながら詩情たっぷりに描く。

そして「氷の朔日」では、うだるような酷暑のなか、氷のように冷たい女の片腕をくわえている野良犬が見つかったことから始まる猟奇殺人を追いながら、ふだんは飄々と生きている市の思わぬ“悩みごと”を佐武は知ることになる。
こちらも江戸の夏の風物詩“献上氷”など、歳時記的な楽しみ方ができるのがポイントである。

ちなみに、まもなく6月1日は日本冷凍事業協会が制定したという「氷の日」。
「氷の朔日」は加賀藩が将軍家に氷を献上した陰暦6月1日「氷室の日」からの着想だと思われるので……。
6月1日は氷の日 『佐武と市捕物控 闇の片脚』を読もう!……って、これはコーナー違いだったカナ?



<文・富士見大>
編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わり、先週5月10日に発売の『俺たちの仮面ライダーシリーズ 電王 10th ANNIVERSARY』、13日発売の『特撮の匠 昭和特撮の創造者たち』にも参加しています。

単行本情報

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